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不動産業ビジョン/ 日本賃貸住宅管理協会 法制化で新ステージへ 賃貸住宅管理フォーラム 塩見紀昭会長 特別企画

 「不動産業ビジョン2030/賃貸住宅管理フォーラム実行委員会」の構成団体である日本賃貸住宅管理協会は95年設立。四半世紀にわたり、賃貸住宅管理業界をけん引し、賃貸不動産経営管理士の礎ともいえる資格研修制度をいち早く始めるなど業界の人材育成にも力を入れてきた。塩見紀昭会長に賃貸住宅管理業法への期待や管理士の役割を聞いた。

 ――長年の活動が実り、賃貸住宅管理業法が成立。6月15日に全面施行した。現在の心境は。

 「今回の法律制定は業界の悲願だった。当協会も制定に向けて様々な活動に取り組んできたので感慨深い。ただ、あくまでも通過点という認識だ。ここから新しいステージへのスタートだと考える。法律という枠組みが整備されたのだから、それをどう生かしていくのかは、我々の役割だ。気を引き締めて、賃貸住宅市場の整備・発展、更には賃貸住宅管理業の社会的地位向上に努めたい」

 ――法律制定で期待していることは。

 「賃貸住宅管理業が一つの業態として認められた意義が大きい。例えば、若者に管理業のイメージを聞くと、建物の手入れや清掃、集金などを思い浮かべるにとどまる。本来幅広い業務であり、プロパティマネジャーと考えれば賃貸住宅オーナーに経営的なサポートをするのも仕事であるはずだが、そこまでは認知されていないのが現状だ。法制化を機に業界のイメージが変われば、今後は他業界と同じように、若者が就職を考える際の選択肢に挙がってくるのではないか。それにより、より多くの優秀な人材が管理業界に集まることを期待している」

 ――反対に、やや不満に感じていることや、今後の改善点は。

 「業務管理者の配置基準が、事務所ごとに1名となっていること。本来であれば棟数や戸数といった規模に応じて配置する人数が変わるべきだと思う。また、管理受託契約の重要事項説明が誰でもできるとされている。トラブル防止のためには専門家が説明すべきだろう。数年後に見直す規定になっているので、その際には改善されるよう期待したい。ただ、まずはスタートした段階なので、我々がどういう仕事をして社会貢献していくのかが問われている」

 ――法律上「管理戸数200戸未満」の場合、登録義務はないが、日管協では今期から登録を正会員要件として定めた。狙いは。

 「管理の戸数にかかわらず、たとえ1戸、2戸であっても賃貸住宅を管理している管理業者であれば法令を遵守すべきだからだ。賃貸住宅管理業の団体として、正会員はすべて登録し、業務管理者の設置や重要事項説明といった登録制度で求められている義務など社会的責務を果たすべきと考える」

 ――賃貸不動産経営管理士が国家資格となった。改めて安全・安心な賃貸住宅管理における管理士の役割をどう考える。

 「まずは、プロフェッショナルになることだろう。管理業というのは、仕事の幅が非常に広い。管理士資格を取ることで、賃貸住宅経営のアドバイスやオーナーからの質問に答えるなど一定の知識が習得できる。その知識を知恵に転換していくのは、個人の力にかかっている。我々管理業者は、法制度から建物知識、リスクなど幅広い分野を対象にするため、その一つひとつを深く習得するのは困難だ。誤解を恐れずに言えば〝広く・浅く〟知識を持ち、その上で問題解決に向けて、弁護士や税理士など各分野の専門家をコーディネートしていくことが重要だろう。そのためにも基礎知識の習得は欠かせない」

 ――昨今、DXが話題だ。安全・安心な賃貸住宅管理市場を目指す上で、管理業のDX化をどう捉えているのか。

 「9月にはデジタル庁が発足するなど、国としてDX化を進めている中で、賃貸住宅管理業にとって、進めるべきテーマだ。ただ、取り入れ方や進め方が重要で、それは各管理会社の規模や考えによって異なるはずだ。管理業は幅広く、賃料査定から入居者募集、入居中、退去というサイクルがある。その中で、DX化すべきところ、そうでないところは各社が考えることになる。そのために当協会としては、管理戸数の規模に応じたモデルケース(成功事例)を提示するなどの適切な情報提供をしていきたい」