主要不動産流通各社の20年度(21年3月期)売買仲介実績がまとまった。大方が手数料収入、取扱件数共に前年を割り込んだ。第1四半期を中心に新型コロナウイルス流行に伴う緊急事態宣言下で店舗閉鎖など営業を自粛した影響が出た。夏頃からは持ち直したものの、前半の落ち込みをカバーするまでには至らなかった。
住宅新報が不動産流通主要33社を対象に実施したアンケートによると、手数料収入で前年を上回ったのは8社にとどまり、全体の7割超が減収となった。取扱件数も前年より増加したのは8社のみだった。
昨春には初の緊急事態宣言で外出自粛が求められ、仲介店舗も2カ月近く閉鎖もしくは時間短縮での営業を余儀なくされた。そのため、各社からは減収の要因として「主に第1四半期の休店の影響」「4~6月の開店休業状態が業績に大きく影を落とした」「外出自粛や営業自粛の影響」の声が目立った。東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の20年度首都圏流通動向調査でも、4~6月の成約件数は中古マンション(前年比33.6%減)、中古戸建て住宅(同22.1%減)共に同機構発足以降で最大の減少率だった。
一方、下期には各社とも回復傾向となった。「個人向け仲介件数が前年同期を上回る水準まで回復」(三井不動産リアルティ)、「第2四半期以降、3四半期連続で前年比プラス」(住友不動産販売)、「リテールは全エリアで需要が旺盛で市況も回復。特に夏以降は前年を上回る水準で推移」(東急リバブル)、「6月以降の旺盛な需要に支えられ、通期では前年同等ラインまで回復」(野村不動産グループ)、「下期としては過去最高の売り上げ水準」(みずほ不動産販売)というように上期とは一転した状況だった。
この下期の需要について、コロナによって在宅時間が増え、「住まいに対する関心が高くなったのが購入を促した一因」(東宝ハウスグループ)と見る向きは多い。三井不動産リアルティの大下克己副社長は先の決算説明会で「子供の進学などで、もともと住宅取得を予定していた層だけでなく、在宅ワークの普及で在宅時間が長期化したことで新たな需要を喚起したのではないか」と分析した。
住み替え先としては、郊外や地方にも関心が高まった模様。近鉄不動産は「名古屋や三重地区、広島地区は4~5月の落ち込みが少なく1年で見ると好調だった」、大成有楽不動産販売は「地域別では千葉エリアのみ増加となった」と言う。前年よりも手数料収入を20%超伸ばしたリストサザビーズインターナショナルリアルティも「住環境や広さを求め、郊外住宅のニーズが高まった」とした。ただ、「その反動で後半については市場の在庫不足、コロナ下で仕入れを抑えていたことで供給不足が影響した」という。
購入ニーズの強さに対して、品薄感を指摘する声は多く、みずほ不動産販売は「専門部隊を中心にした組織的な物件供給」によって対応。小田急不動産は「コンサルティングメニューの拡充や社会課題解決に資するサービス提供などで差別化戦略を推進するほか、ウェブ対応を強化し情報量の拡大を図っていく」方針だ。なお、期末店舗数については、増加と横ばいがそれぞれ13社で、減少は7社だった。大和ハウスグループは「大和ハウス工業(住宅部門)の全国60拠点に1~3名の仲介担当者を配置した」ため大幅増となった。