マンション・開発・経営

まちづくりに「緑」導入 地域との摩擦少なく 長期的な資産価値維持も

 まちづくりに「緑」を取り入れるディベロッパーが増えている。特に、エリアに愛着を醸成するためにエリアマネジメント活動として緑を活用する。緑は、心理的な効果のみならず、緑の導入は「地域の摩擦を生みにくい」(安田不動産)という特徴もある。緑を生かしてエリア価値向上を通じ、保有不動産の長期的な資産価値維持を図るディベロッパーの取り組みを取材した。

 安田不動産と(株)DAISHIZEN(東京都港区)は、東京都中央区日本橋浜町で、20年8月3日に「TOKYOMIDORI LABO.」(トーキョーミドリラボ)をオープン。同物件には、植栽設計から空間プロデュース、店舗開発などグリーンに関する幅広い事業を手掛けるDAISHIZENに加え、植物を軸に活動する5社が入居した。同物件はラボ型キッチン、シェアスペース、更に育てることを体感するシェアファームを屋上に備えている。また、外構のほか、ビルのエントランスホールには様々な果樹を地植え、各フロアのキャットウォークから植物が見えるなど緑が目立つ外観だ。

 同物件を活動拠点として、昨年発足したエリアマネジメント組織「日本橋浜町エリアマネジメント」が主体となる活動「HAMACHO MIDORI PROJECT」を昨年10月に始動。その第1弾としてプランターベンチを飲食店など二十数カ所のテナントの店先に置いた。店主が自ら緑を管理してくれるといった自主的に活動に参加する雰囲気が生まれる効果があった。更に、安田不動産は、エリマネの活動を持続可能なものとするため、地域の企業を巻き込むことを検討している。新型コロナで進んではいないが、住民と企業がトーキョーミドリラボのキッチンやシェアスペースを使って触れ合う機会を提供していきたいと考えている。

 緑を地域に開放する動きは、他のディベロッパーにも広がっている。東急不動産は、都内4棟のオフィスビルの屋上空間において、菜園活動「Vegetable Smile」(ベジスマ)を本格展開。トウモロコシやブドウ、スイカなど約50種類の野菜や果物を栽培している。収穫した野菜や果物は加工品とすることで、ビル内の飲食店舗のオリジナルメニューや環境教育の場を提供する。

 「ベジスマ」を開発物件に取り入れることで、入居テナントで働く人の満足度向上に加え、近隣住民や保育園に通う子供たちに向けた環境教育の場としても活用する。地域に開放することでエリアのコミュニティ形成に役立てる。