賃貸・管理

秋の賃貸住宅市場 コロナ禍の需要の変化に対応 生まれた課題、新たな商機も

 「住まい方の多様化」が進んだ秋の賃貸住宅市況。不動産取引の現場ではどのように受け止め、対応を進めたのか。賃貸オーナーとの連携が深い事業者に、今後の展望と併せてヒアリングした。 (1面記事参照)

消費回復、反響も前年増 グッドルーム 管理会社専用ポータルで

 gooddaysホールディングスの100%子会社であるグッドルーム(横田真清社長)は、好調を維持した。同社は管理会社専用の賃貸ポータルサイト「グッドルーム」を運営。同サイトの月間ユーザー数は約100万人に達し、10代~20代の若年層を獲得しているという。管理会社のみ掲載できるポータルサイトとして、管理会社の自社付けを強化し、広告費の削減と空室解消に寄与していくサービスだ。

 従来のポータルサイトとは異なり、「築年数検索機能がないことで、他社ポータルサイトでは埋もれてしまいがちな築古物件にも反響を呼び込むことができる。チャット機能に特化しているため、メールユーザーよりも高い返信率・アポ率を獲得し、高い費用対効果を得られる」(同社)と自信を見せる。基本サービスとオプションというシンプルな料金体系で提供しており、現在、5000戸以上を管理する全国の管理会社100社以上が掲載しているという。

 コロナ禍では、同社が運営するウェブメディア内のインテリア関連のコラム記事の反響が増えており、同社はユーザーの〝おうち時間の増加〟を推測する。市場の動きでも、2人暮らし層を中心に、ワンルームなどの間取りから1LDKなど2間以上の間取りを希望するユーザーの増加を確認したという。

 また、「グッドルーム」のユーザー数および反響数は、どちらも9~10月において前年同時期比で20%以上伸長したと言い、「10月は例年通りの落ち込みはあるものの、秋は4~5月と比較しても反響は落ちていない。消費は進んでいる」(同社)との受け止めだ。

 今後も「当社サービスの基本姿勢であるユーザーのニーズに合わせた掲載内容、正直なサイトであることを徹底し、マッチングの精度を高めていく」としている。

「IT重説」外出自粛時に増加 ホワイトホームズ 夏秋で住み替え需要進む

 東京都大田区のホワイトホームズ(河津文三社長)は、秋の賃貸市況を好調と受け止める。落ち着いたファミリー向け物件の多い低層地帯を商圏に、賃貸仲介・管理、売買仲介等を手掛け、直近の賃貸管理戸数は1460室、入居率は98%以上を誇るという。

 同社の7~9月の賃貸契約件数は160件(前年比35.6%増)。新型コロナの影響で4~5月は落ち込んだものの、6月以降回復して夏秋は好調を維持した。10月は前年を更に上回る勢いで、自社の管理物件に加え、他社の管理物件の客付で仲介件数を伸ばしたという。同社の渡辺広美氏(オーナーサービス課コンサル室室長)は「コロナ禍で解約する人は少なかったが、在宅ワークで部屋を広くするための住み替えはあり、同一エリア内の比率が高かった。きちんとしたリフォーム済みの部屋はすぐに決まる」と述べ、市場の動きを指摘。入居者からは近隣の騒音苦情は出たものの、賃料トラブルはなかったという。「春先の時点でオーナー側から入居者を守るため、減額を促したケースも見られた」(渡辺氏)。

 同社では賃貸住宅におけるIT重説にいち早く対応。これまで5%程度だった「IT重説」の実施割合が外出自粛要請期間の5月には14%に増加。渡辺氏は、消費者の非対面ニーズの高まりに触れ、「契約者である夫が単身赴任、妻と子の住み替え先を見つけたケースでは、当社が双方をつなぎ、IT重説で距離の壁を取り除いた」と説明。内見の際、同社の営業スタッフが物件を回り、タブレットで候補物件の絞り込みを手伝う取り組みも紹介し、非対面ニーズへの対応強化を掲げた。

留学生動かず秋は停滞感 GTN 短期滞在で連携構築へ

 外国人専門の生活総合支援事業を展開するグローバルトラストネットワークス(GTN、後藤裕幸社長)は、秋市況を停滞傾向と受け止める。

 同社が運営する外国人向け部屋探しサイト「ベストエステート」では、オーナーの許諾を受けた物件約11万件を掲載。月間ページビューは約20万件に上るが、「8、9月は海外からの新規顧客の流入の一時停止、国内では留学生事業が芳しくなく、流動性も落ち着いていたため、賃貸仲介の成約件数は前年を下回った」。10月以降、渡航解禁を受け、回復傾向だという。

 コロナ禍において入居者の生活サポートの強化や、来店せずに物件提案から契約までを完結する「オンライン仲介」も開始した。今後は、「特定技能・法人の需要が増えている」(同社)ことから、保証・仲介事業を着実に進めると共に、サービス拡充を目指す。モバイルや生活サポートなど外国人顧客に選んでもらいやすくなるための商材やサービスを提供していくという。

 同社では新型コロナによる入国・帰国後のレジデンストラックでの2週間の待機対応に関する問い合わせ、需要が増加していると言い、「新たに生まれた市場として、マンスリーや短期滞在に協力可能な不動産事業者との対応を強化している」と展望する。