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大言小語 雑草にも花は咲く

 あまりの猛暑に庭の手入れもままならない。雑草がびっしりと覆い尽くしている。その中で1本の草がまっすぐ伸びている。いつもなら10センチにもならないうちに摘んでいるのだが、今は1メートル以上の背丈がある。

 ▼上部はまるで樹木のように何本にも枝分かれしている。その立ち姿がなんとも美しく、誇らしげに揺れている。「君はそういう形をしていたのか」と思わず話し掛ける。しかもよく見ると先には小さな白いつぼみがたくさんついている。途中で摘まれていたときは、さぞや悔しかったことだろう。

人間は自分の家の庭は自分が支配者だと思っている。しかし、雑草からしてみれば彼らのほうが先住民だ。かように、人間の生活は身勝手な思い込みの連続である。

 ▼不動産業界にも長年見過ごしてきた思い込みがある。なぜ、何の資格も持たない社員でも営業ができるのか。重説や契約書面への押印は宅建士がやるから大丈夫という思い込みだ。経験豊かで実力のある営業マンなら客は納得する。しかし、資格も実力もない新人をあてられた住宅購入客は目も当てられない。

 ▼コロナで社会の価値観が変わると言われている。働き方も見直され始めた。重要なのは見直す視点である。庭の雑草の気持ちになることは難しくても、店に訪ねてくる顧客の気持ちを計り、日々の営業に顧客の視点を持つことは新たな働き方のスタートとなる。