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社説 16年の住宅・不動産業界 〝本気度〟上げる1年に

 新たな1年が始まった。干支の「申」は、「伸ばす」を表し、「実が成熟して固まっていく」という意味もあるようだ。住宅・不動産業界ではここ数年、これまで通りの既定路線にはない新たな動きが見られている。人口動態や消費嗜好の変化などを考えれば、新たな動きが出るのも当然だろう。しかし、変化する時には必ず痛みや困難が伴う。ここ数年の努力を固めていく、そして更に固めるために、業界全体が〝本気度〟を増して取り組む姿勢が必要だ。

 日本全体の傾向としてもとらえられるが、「二極化」は業界にとって大きなキーワードとなっている。分譲にしろ賃貸にしろ、人気のある物件とそうでない物件の差がより鮮明になっている。そして、消費者側も「余裕のある人とそうでない人」の二極化は進むばかりだ。

 多くの二極化現象には、「価格高騰」といった要素が大きく影響していることに間違いはない。ただ、そういった外部環境ばかりを嘆いてばかりでは、何の進歩も得ることはできない。価格高騰に対応する企業努力を本気で行っているかどうか、また、価格動向に関係なく、消費者に感動を与えられる住まいの空間提供のためにどれだけ全力を尽くしているか。〝住まい〟という人間にとってかけがえのない商品を手掛けている自覚を、改めて強めていきたい。

 2020年までに中古・リフォーム市場規模を倍増させる、という政策目標が7年ほど前に掲げられた。その間、目標達成に向けて様々な施策が考えられてきた。金融など多方面との連携も重要で、立ちはだかる壁が多いものの議論は着実に進み、深化してきたと評価できる。ただ、「倍増」の期限まで残り4年となった。今まで通りのスピード感では、実現は到底無理だろう。中古流通活性化のための更なる税制・予算支援、そして何より、中古住宅を取得・流通することのメリットを、業界全体がもっと声を大にして発信していく必要がある。

課題解決のために

 そのほか、「空き家問題」「地方創生」など業界内には数多くの注目キーワードが浮かび上がっている。いずれも今後の日本の在り方そのものを問う課題といえ、数年先の解決に向けた「礎」を築く1年にしていくことが求められる。そして業界に横たわる数々の課題解決のためには、個々の企業の頑張りが不可欠だ。

 時代は厳しい局面に入っている。〝これまで通り〟では、企業の存続すら危うい時代だ。個々の企業がどれだけ本気度を上げて取り組んでいくか。結局のところ、住宅・不動産業界の行方はその部分にかかっていると言っても過言ではない。