政策

社説 16年度税制改正議論が本番 住宅取得の固定資産税軽減拡大を

 来年度の予算要求と税制改正要望が各省庁からこのほど発表され、年末の税制改正大綱とりまとめに向けた税制改正議論が本番を迎える。住宅税制の来年度のひとつの争点になると言われているのが、「新築住宅にかかわる固定資産税の軽減措置の延長」だ。延べ床面積120m2までの部分について、一般の新築住宅は3年間、中高層住宅は5年間、それぞれ税額を2分の1に軽減している現行特例措置の期限切れに伴う延長要望だ。

業界側に警戒感

 新築の固定資産税の軽減措置は1952(昭和27)年から約60年にわたって延長が繰り返されてきただけに、延長打ち切りに業界サイドも警戒感を強めている。

 導入当時と経済環境が向上し様変わりしているとはいうものの、住宅の一次取得者の中心となっている若年層の年収は昨今、低下傾向にあるといわれている。しかも消費税が8%へ増税されたのに続いて、17(平成29)年4月からは10%への再引き上げも控えている。住宅を取得するハードルはますます高まるばかりと言わざるを得ない。こうした環境下での延長打ち切りは、住宅取得者の選択肢を一層狭めてしまうことは必至だ。新築の固定資産税軽減は、住宅取得時の負担を和らげて、質の高い住宅取得を促していくための必要不可欠な措置であり、更なる延長は欠かせない。

 一方、従来の住宅市場がスクラップアンドビルドに支えられてきたことの反省を踏まえて、住宅政策は新築偏重から優良な新築供給と中古の流通促進へと転換しつつある。こうした政策の進展と並行して、新築と中古を色分けする意味合いもまた徐々に薄まっていく方向にある。住宅税制も政策と連動するかっこうで、両者のバランスのとれた住宅投資を促す措置がこれまでにも増して必要とされてくることは明らかだ。新築だけを対象にしてきた固定資産税の軽減措置についても、延長の是非ではなく、中古住宅を含めたすべての住宅に適用範囲を拡大することが議論されるべきだ。

新築、中古切れ目なく

 既に、中古住宅やその流通を重視した税制の拡充もこれまでに幾度となく積み重ねられている。例えば、居住用財産の買い換え特例や耐震・バリアフリー・省エネ改修の特例、買い取り再販で扱われる住宅取得の特例といった中古住宅の流通に資する各種特例措置が設けられている。国土交通省の今回の税制要望には、社会問題化している空き家の発生を抑制する特例措置の創設も盛り込まれている。

 住宅が国民の生活を支え、多くの豊かさがもたらされるようにするには、新築、中古の切れ目のない市場の再構築を念頭に置いて、税制の拡充と政策を推し進めていく必要がある。