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大言小語 祈りを捧げた大男

 戦後70年節目の日の広島で、赤毛の大男が原爆ドームに並んでいた。プロ野球阪神タイガースのマット・マートン選手だ。「True peace can be found in Jesus」敬虔なクリスチャンである彼は試合前、原爆犠牲者の霊を慰めた。

 ▼広島には、原爆で亡くなられた遺族の他、彼のような外国人の姿が多くあった。そういえば、1年前に訪れた時も多くの外国の人が原爆ドームと平和記念公園にいて、死者の冥福を祈っていた。そして、二度と原爆が落ちるような事態にならないよう、平和を祈っていた。

 ▼原爆は太平洋戦争を集結するための苦渋の決断であるというのが、当時の大統領トルーマンの見解で、今なお多くの米国人の意見だ。しかし、軍事基地のみを目標としていたトルーマンの意見は変えられ、罪のない一般市民が大量に犠牲となった。懲罰目的と実験データの蓄積のために投下されたとの説が有力となっている。原爆投下で大戦は終結した。しかし、その本来の目的は…それゆえ米国人の意識も複雑だ。

 ▼マートン選手は米国ジョージア工大出身。本職では高い打率を残す一方、強引なスライディングや審判への暴言など、ラフプレーも目立つ。「日本をなめている」との声もあった。しかし、猛暑の中、コンディションを整えるべき試合前に立ち並ぶ彼の姿に広島の人は、敬意と賛意を表した。マートン、ナイスガイ!