政策

社説 マンションと地域活動 防災などで存在感示すとき

 3月11日、未曾有の被害をもたらした東日本大震災から丸4年が経過した。この日を前後して各地で様々な追悼行事が行われたが、一部地域を除き、被災地の復興はまだ緒に就いたばかりである。特に仮設住宅暮らしや避難生活を送る人がまだ20万人以上もいる現実。何よりも、生活と将来設計の基盤となる住宅の確保を第一に復興事業を進めてもらいたい。

被災地の「二つの風」

 被災地は今、「二つの風」に悩まされている。一つは「風化」であり、もう一つは「風評被害」である。願わくは、年に一度の集中豪雨的なイベントではなく、普段から大震災を思い起こし、被災地に思いを寄せること。更に今後予想される首都直下大地震や南海トラフ大地震への備えを喚起させる取り組みが定着することを望みたい。また、復興の大きな障壁となっているのが原発事故だ。国の総力を結集して対策にあたる姿勢を明確に打ち出す必要がある。今のままでは内外の厳しい指摘にさらされ続けることになりかねない。

 その東日本大震災が大きくクローズアップさせたのが地域の絆やコミュニティである。大災害から身を守り、安全・安心を確保するために最も大事なのは自助だが、それ以上の大きな力となるのが共助、つまり地域の助け合いである。阪神淡路大震災などで明らかなように、壊れた家屋から助け出してくれるのは近隣の人たちだ。救助は時間との闘いだが、広域災害の場合、警察、消防などの到着を待っていては、命は助からない。

強い建物と人材

 その地域の助け合い、コミュニティ活動、防災拠点として今注目されているのが分譲マンションだ。大体が10階建て以上の高層建築物で、100戸、200戸以上の大規模物件が多い。しかも建物は地震に強いことが実証されているし、そこには幅広い年代の多くの人々が住んでいる。高齢化が進む地域にあっては、マンションは「人材の宝庫」でもある。管理組合が自治体、町内会と連携することで災害に強い地域をつくり上げることもできる。

 大都市の自治体では、既にマンション管理組合と、津波の際の「避難ビル」として近隣住民を受け入れる協定を結ぶ事例や、開発時に地域の防災備蓄倉庫を敷設してもらうケースも出始めている。

 まだ事例は少ないが、大規模マンションは地域防災の拠点として位置付けられつつある。防災を強化したい自治体と、既存・新規マンションの協力関係の強化が一層求められてくるだろう。その意味で管理組合と、運営支援する管理会社の役割は一層大きくなるはずだ。マンションは地域活動や地域コミュニティづくりにとって欠かせない存在になったということである。防災に留まることなく、普段から地域での存在感を意識した管理組合の活動が広がることを期待したい。