総合

社説 住宅生産工場に拡充の動き 高度化、多機能化が急務

 消費税増税にかかわる住宅需要の駆け込みや反動減も山場を越したところで、住宅各社の間で生産工場を見直す動きが目立ってきた。東京五輪開催、震災の復興需要など職人不足や建設費の高止まりが見込まれるうえ、活発な賃貸住宅の建設投資、更には延期された消費税の再引き上げなどもあり住宅市場の先行き不透明感が高まる中、工場の更なる効率化を図って、それらに備えるという狙いが見える。住宅市場を底辺で支えている住宅工場にも、更なる多機能化や高機能化が求められている。

 長期的には人口や世帯の減少が進んでいく中で、新設着工は長期的な減少を余儀なくされるのは明らかだ。その市場縮小が避けられない新築住宅市場に対して、住宅各社はシェア拡大を事業戦略の柱に据えている。工期短縮、品質や施工精度の向上、コストダウン、更には人材の確保はそれらの裏付けとなる。

部材建材多様化の壁

 業界でもトップクラスの工場生産率を維持している積水化学工業は昨年から、約170億円をかけて全国にある「住宅生産工場の魅力化推進計画」に取り組み始めている。稼働した年代が異なり、全国の工場の生産効率にはばらつきがあるため、これを一定水準に底上げすると共に、商品ラインアップや部材・建材の多様化に伴って一時は80%を超えていた工業化率が60%台にまで低下している現状を再び引き上げるのが目的だ。

 また、東建コーポレーショングループのナスラック・シスコ千葉工場は、賃貸住宅向けの重量鉄骨の溶接加工に最新鋭ロボットを導入する設備投資をこのほど行い、増産体制を整えた。相続税引き上げに伴う資産運用ニーズの高まりを受けて、当面、賃貸マンションの建設受注が高い水準で推移することに対応したという。

 一方、現場施工と同様に、多くの住宅工場においても従業員の高齢化や職人不足が長期的な課題として浮上してきている。若手の人材確保と育成に取り組む動きも広がりつつある。トヨタホームは、施工店と工場の人材の戦略アップなどをねらいに、工場内に技能センターを昨夏に稼働した。出荷したユニットを、工場の従業員が現場に出向いて組み立て工事も行える多能工化も同時に目指しており、将来の特需や市場の変化に柔軟に対応していきたい考えだ。

 地球温暖化防止に向けて工場や施工現場の環境対応は一定の成果を見せてきたが、更には地域貢献もこれからの工場には求められていくだろう。雇用の確保、学校や企業研修のための工場見学の受け入れなど、工場の持つ潜在的なポテンシャルは大きい。先行き不透明な環境変化に対応しながら、一層の高機能化や多機能化が住宅工場に求められている。