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大言小語 「フリーアドレス」オフィス

 企業はタテ割り社会である。組織図は通常、取締役会などの下に管理部門から事業部門の各本部や部課、支店などが並ぶ。オフィスは各部課のデスクがまとまって島を形成。独特の縄張りのような空気を漂わせているのが一般的だ。そうした常識を打ち破る、固定席を一切設けない完全フリーアドレスのオフィスがこの4月、東京・丸の内に誕生した。

 ▼管理職席もなければ社長室もない。個人ロッカー以外はすべて共有。550人の社員に様々なタイプのデスクやワークポイントを400席用意。仕事に合わせて選択できるようにした。持ち歩くノート型パソコンなど、最新のITツールを導入したことで可能になった。

 ▼シービーアールイー日本法人が、自社オフィスをショーケースとして、戦略的に提案しているものだ。引っ越し半年前から周到に準備を進めた。事務所内は東京、ロンドン、パリ、ニューヨーク、ロサンゼルス、シドニーの各エリアに分かれる。視察したその日、社長の姿はロサンゼルスの一角にあった。

 ▼このオフィスには金融保険からIT、運輸サービスなどまで幅広い企業が興味を示している。「アイデアやコラボの促進など、フリーアドレスのよさは理解してもらえても、日本企業にはなじみにくい」とは、かつて提案が不採用になった経験を持つ元大手広告代理店マン。企業風土という壁と、経営トップと社員の意識が立ちはだかっているようだ。