政策

社説 地価公示を考える 地点減少は課税適正化を欠く

 21日に、今年1月1日現在の地価公示が発表される。大方の見方では、株価の上昇や投資マインドの好転から、前回より上昇地点が増えるのではないかとされている。ここでは、その数値はさておき、地価公示制度そのものについて考えてみたい。折しも、昨年6月に行われた行政事業レビュー、いわゆる事業仕分けをうけ、国土交通省は「地価公示のあり方検討委員会」を設け議論してきており、近くその報告もなされる予定である。

6千調査地点が減少

 地価公示は、地価公示法に基づき、1970(昭和45)年から実施されており、44年の歴史がある。しかし、国の予算削減を受けて調査地点は減少傾向で、03年は3万1866地点だったものが、12年は2万6000地点と約6000地点も減っている。当然ながら評価に従事している不動産鑑定士も減少し、12年公示にかかわったのは2700人だが、年間約37億円の予算が有効に使われているのかと、削減を求める声があるからだ。

 レビューでは、地価公示が「一般の土地の取引に対する指標」であるという役割のひとつに触れ、これを参考にして売買している人はほとんどいないのではないか、という指摘があった。しかし、土地取引は売り手と買い手の経済的意向にそって行われているのであり、指標である公示価格とかい離するのは当然である。また宅建業者の無料査定の現場では、地価公示を参考にしており、レビューの指摘は的外れといえる。

活用の場は広い

 問題なのは、調査地点が減少している点であろう。相続税を評価する路線価は公示地価の80%、固定資産税評価額は公示地価の70%を、それぞれ目標に決定されている。このため地点数の減少は、地価が適正に把握できずに課税の根拠を失うことにもなりかねない。

 東京・中央区の銀座を例にとると、地価公示は10地点、地価調査の5地点を合わせても15地点しかない。面積は東京ドーム18個分もあり、これだけで適正な税務管理ができているのかと疑問視する声もある。

 地価公示は課税の根拠にもなっているのだから、財政再建を旗印に短絡的に縮小するのは課税の適正化を誤る。こう考えると、むしろ調査地点は増やすべきであろう。

 それだけでなく、親会社と子会社の土地取引や、土地の現物出資、土地所有会社の合併比率を計算する場合、そして競売、公売、土地収用、訴訟等々さまざまな場面で公示地価が活用されていることは、余り知られていない。

 アベノミクス効果もあり、地価の下げ止まりや上昇が取り沙汰されている昨今、地価公示の役割は大きく、重いことを再認識すべきである。