政策

社説 新政権が担う住宅政策 デフレ脱却で住政策を加速

 第2次安倍新内閣が始動した。首相辞任から5年ぶりの再登板で、自公連立は3年3カ月ぶりの政権復帰となった。これに伴う組閣では、国土交通大臣に公明党前代表の太田昭宏氏が就任。国土行政も民主党から自公連立政権にバトンタッチされた。

 新政権が目指す当面の目標は、経済再生。新政権に対する期待の高まりから、為替は円安に傾き、株価も上昇基調。早くも円高是正への道筋が見え始めた。また長年、地価下落という逆風下にあった住宅・不動産業界にとって、デフレの解消、資産デフレ対策は心強い政策目標と言えるだろう。

 政権交代で、政治は大きな転換期を迎えた。とはいうものの政策に切れ目が生じてはいけない。民主党政権下では「ストック重視の住宅政策への転換」が最重要課題として位置づけられ、中古住宅流通とリフォームの2つの市場を20年までにそれぞれ倍増する計画が掲げられている。新築偏重の住宅政策から中古住宅の流通促進へと大きく舵が切られたばかりだ。約3年の間に、リフォーム市場の整備をはじめ瑕疵保証、建物検査、住宅履歴情報の整備といった中古住宅の流通を活性化させるための具体策が既に動き始めている。住宅・不動産業界もこれに呼応して、中古住宅需要の高まりに対応したサービスやビジネスが次々と提供されるようになってきた。

住宅は「重要な国富」

 自民党の目指す住宅政策にも、住宅税制や融資、規制緩和により「住宅の資産価値を高め、ライフステージに応じた住まい方を推進する」ことが明記されている。他産業に幅広く経済波及効果がある住宅を「重要な国富」として位置付けており、住宅を資産として残せる「ストック社会」の実現を目指す考えだ。前の自公政権期とは経済環境も国民生活も明らかに状況は深刻化している。これらも踏まえて、高齢化や所得の低い若年層にも配慮しつつ、多様化が進むライフステージ、働き方や暮らし方に応じてゆとりある住環境を整備するという。

 具体的には、長期優良住宅の供給、既存ストックの資産価値を維持、増大させる耐震・省エネ・バリアフリー化などのリフォーム、住宅団地へのエレベーターの設置の推進に加え、住み替え・中古流通のため市場環境整備が示されている。これと共に、エネルギーの効率化やCO2削減を図るスマートハウスの普及にも取り組むとしている。

 その中で、「中古住宅の流通促進」は2つの政権に共通する政策テーマだ。これまでの住宅政策を、新政権の目指すところのデフレ脱却をもって更に強力に後押しすることが必要だ。新築の供給とバランスをとりつつ、引き続き「ストック重視の住宅市場」の構築に全力で取り組んでもらいたい。