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社説 新年の景況見通し 厳しさ覚悟で市場開拓を

 欧州危機、円高・株安という厳しい経済情勢の中、東日本大震災からの復興を期して迎えた新年。住宅・不動産業界は、底堅い需要と税制など政策的な後押しの継続が決まって、比較的穏やかな幕開けとなった。「登り龍」ではないが、「上り調子の1年」にしたい。

 不動産協会と不動産流通経営協会は1月6日、都内で合同賀詞交歓会を開いた。木村惠司不動協理事長は、業界の景況見通しについて「課題は幾つもあるが、需要の変化はビジネスチャンス。『明るい年にするぞ』という強い意志で臨む」と強調した。会場は近年にない混雑ぶりとなった。その熱気と気迫をビジネスに生かすことができるか。

 

事業環境は継続された

 事業環境は昨年と変わらない形で継続された。固定資産税軽減措置や住宅取得資金贈与の特例措置の延長・拡充など、業界の税制要望はほぼ通った。一方で、新たな問題として消費税の引き上げが浮上した。「住宅取得」への配慮、緩和措置をどう実現できるのかに焦点は絞られた形だ。

 住宅新報社が毎年12月に業界主要企業の経営トップに聞いているのが「新年の景況見通し」アンケート。リーマンショック以降、厳しい見方が大勢を占めているが、12年も同じ傾向となった。11年は東日本大震災があったため、市況回復への軌道は仕切直しとなったほか、分野によって回復度合いに格差が広がったのも特徴だ。新設住宅着工は政策効果もあって年間85万戸程度まで回復するとの見方が増えてきたことに加え、売れ行きが堅調なマンションなどの分譲住宅も復調傾向を強めている。競争は厳しいが、この分野の市場規模は着実に拡大の方向にある。

 また、既存住宅の流通市場は根強い需要に支えられ、11年も比較的堅調に推移した。ストック活用、流通・リフォームに対する政策の後押しもあり、12年は一定水準以上を維持すると見られる。12年に「活発化する」分野として挙げられるのはリフォーム・増改築市場である。耐震改修や省エネ・断熱改修など、防災対策やエネルギー問題への対応は政府が最も力を入れている分野であり、業界がこの事業分野をどう切り開くかも市場活性化の課題である。

 

賃貸分野での活路は

 これに対して厳しいのはアパート・マンションの賃貸住宅とオフィスなどのビル市場。経営者の見方も「昨年並みの厳しさが続く」が最も多く、空室率の改善、賃料の下げ止まりとも不透明な状況だ。賃貸市場は供給が多かったことに加え、経済変動で需要が流動的であるため、調整にはなお時間が掛かるとの見方が多い。

 このように、住宅・不動産市場には分野によって明暗が分かれるが、新たな分野への挑戦と共に、厳しさが予想される分野でどう活路を切り開くことができるかも注目されるところだ。