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社説 『中古のジレンマ』乗り越える リフォーム付きを新たな文化に

 国は中古住宅の流通促進策を進めている。理由はいろいろある。一つは、既に住宅は余っているのだから、今後は新築供給よりもストックの活用に力を入れるべきだというもの。しかし、余っているといっても全ストックの13%程度だし、仮に中古住宅を売った人が新築に住み替えるのだとしたら、中古が流通する戸数分は新築が必要になる。

 現に首都圏では年間約30万戸の中古住宅が売りに出されているが、それは新築の供給数とほぼ同水準だ。

 

資産維持で買手メリット減?

 二つめは、住宅の資産価値を維持するためにも新たな供給は抑えた方がいいというものだ。確かに需給関係で価格が決まるのだから、新規供給が細れば中古の価格は安定する方向に進む。売り手にしても、価格が下がり過ぎるとオーバーローン(売却価格よりもローンの残高の方が多い状況)となり、売るに売れない。

 しかし、ここには重大なジレンマが潜んでいる。つまり、資産価値の維持がなされ新築と中古との価格差が小さくなればなるほど、中古を買う最大のメリットが薄れていくことになる。

 三つめは、住宅取得適齢期と言われる30代の所得が伸びていないことだ。若年世帯のローン破たんを防ぐ最大の方法は、借り過ぎないことなので、そのためには価格が安い中古を買い、リフォームをして住むスタイルを普及させるべきという考え方だ。ただ、これも中古なら相当安く買えるということが前提になるため、売主側のインセンティブにはならない。

 更に、リフォーム市場を拡大させていく必要はあるが、価格はあまり上げられないという事業者としてのジレンマが生まれる。

 

新築との対比はもう古い

 このように見てくると、中古住宅の促進は新築との対比で考えるものではなく、「中古+リフォーム」という住まい方自体を新しい文化としてとらえることが必要なのではないか。

 更に言えば、新築と中古を分ける考え方自体がもう古い。住まいは人(自分)が主と書くのだから、その本質は、立地も建物も内装も設備もすべてを自ら選択・創造するところにある。

 これからの住宅ユーザーには、与えられるのではなく、自ら選びとる覚悟が必要だし、業界には情報開示を積極化し、賢いユーザーを育てるという姿勢が求められている。