政策

いまこそ前を向いて進もう 地域政策 埼玉県・上田清司知事と語る (株)リゾン代表取締役会長・橋本岩樹氏 地域密着のまちづくりと絆の形成②

鉄道沿線と地域的特色

上田知事 県内は東京からの鉄道や幹線道路が放射線状に伸びていて、特に鉄道によって地域や住居が分かれる傾向があります。各沿線それぞれに特色があり、県としてはそれを生かし、各地のアイデアなどを全県に紹介して、広げていけばいいのです。

 最近、県で健康長寿のプロジェクトを募集したところ、決まったのがなぜか朝霞と坂戸と東松山の東上線沿線の3市でした。

 坂戸の場合は、女子栄養大学との食べ物も含めた生き方での健康長寿。東松山は元々歩け歩けのメッカで、運動を通じた健康長寿。朝霞の場合は、団地でお年寄りが持っているものを蘇らせて、団地を丸ごと元気にしようというものでした。成功すれば、例えば「朝霞モデル」として広めていくつもりです。

橋本会長 沿線単位や人口単位で考えるのではなく、まずは地域のコミュニティが分断しないことが大事です。つまり、家族の絆が深まる仕掛けを住居に作ること。次に、近隣地域のコミュニティが復活する地域づくりを計画的に行うこと。更にそのコミュニティが沿線や地域全体へとつながっていくことです。鉄道沿線などで分かれている地域の特徴を伸ばす方向性こそ、埼玉県の未来ビジョンであると思います。

上田知事 埼玉県の各沿線の共通点は「田園都市」であることです。田んぼがあり、そこそこの規模の都市がある。都市と田園がマッチしている意味では理想的。残念なのは、急激な都市化の中で、地域の空間が汚れてしまったことです。川をきれいにすることなど課題と現実を直視しながら、各地の環境の改善を図りたいと思います。

街づくりとコミュニティ

橋本会長 私が考えるコミュニティ街づくりは、和光市越後山で実践中です。コミュニティデザインと名付けたその仕掛けがあると、家族や近隣はコミュニティで結ばれていきます。例えば、30世帯が1本の実のなる柿の木の権利を持つ仕掛けの中で、柿の酢を作るイベントがあります。楽しいそのイベントが何年か継続すると、地域が年々仲良くなっていくのです。

 先ほどのポケットパークもその仕掛けの1つで、このような仕掛けが20くらいあるのが越後山街づくりです。その仕掛けは、日曜日の朝食会やタイムカプセルを作る活動などに発展しています。アパートでも分譲マンションでも設備を誇るだけではなく、入居前に近隣と仲良くなる楽しいイベントを行い、町内会などとつなぐ。これが我々、住宅事業者の役割であると再認識することが大事です。

上田知事 そうした先行モデルを紹介して、県下で広めてもらうのが県としての立場です。県はいま、「田園都市の集合体としての埼玉県」という理念で、すべての川を清流に戻し、アユ釣りやバーベキューができるようにしようとしています。それがコミュニティづくりになる。それができると、犯罪もなくなるし、不登校もなくなる。そうした取り組みの積み重ねこそが、社会的コストを減らすことにもつながります。