総合

粋な俳諧

 最近、俳句・短歌が人気を取り戻しているらしい。高校生の句会なども盛んに開かれているとのこと。なぜなのか、と思っていたが、とある番組を見てその魅力が分かってきた。NHK・Eテレの「俳句王国」がそれである。

 ▼これは、日本を代表する俳人が主宰となって、テレビ上で句会を開き、作者を明らかにしないまま、参加者が自分の評価する句に星を付け、総評するという番組。主宰の句に星が入らなかったり、素人の句が最も評価されるなど意外性が面白い。古来から句会が行われてきた理由がようやく分かった。

 ▼今の句・歌は面白い。「問十二、夜空の青を微分せよ。街の明かりは無視してもよい」(川北天華)。理系の当時高校生の歌。しっかり数学の問題文になっていて、かつ、風情もある。小子は句や歌を作ることはしないが、こうした作品を見るのは好きだ。彼我の差を感じてしまうが。

 ▼「百均の赤いきつねと迷ひつつ月曜だけ買う朝日新聞」(公田耕一)。「いわきより北へと向かふ日を待ちて常磐線は海岸を行く」(寺門龍一)。前者は、新聞に「ホームレス」という肩書きで投稿し、数々の歌が評価されたものの、現在行方しれずとなっている人の歌。後者は、御年81歳、茨城県で東日本大震災に遭い、今年の歌会始に「岸」という題で詠んだ歌だ。小子の感想など、もういささかも必要ないだろう。