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「大言小語」 変わる街

 十数年ぶりの事務所移転で、かつて本社を置いていた「虎ノ門」の地に住所が変わった。虎ノ門に通い始めて約25年。事務所移転は今回が2度目。どの事務所も駅からは至近で、虎ノ門はいつしかホームグラウンドになった感がある。

 ▼入社当時のこの街は、虎ノ門交差点を中心とする大通り沿いに銀行や信託、住専が立ち並び、金融街の様相を呈していた。その後、地価下落や不良債権、住専などが社会問題化。金融再編の大波がこの街を一変させた。

 ▼かつて金融機関のあった場所は今は、ファーストフード店かコンビニに変わった。同じ行名になってしまった銀行同士が大通りをはさんで対峙した時期もあった。いかに激動の時代であったかを街の変遷が物語るようでもある。身近なところでは、顔なじみになった喫茶店やレストランも徐々に姿を消していった。

 ▼一変した街にこの秋、嬉しい知らせが届いた。虎ノ門と隣合わせの内幸町に、かつての名前で飯野ビルが完成したことだ。新しい飲食街を訪れると、昔あったレストランも戻ってくれていた。

 ▼虎ノ門地区周辺はこれから、大きな再開発プロジェクトの完成がいくつも控えている。時代と共に街も変わり続けていくのが運命。それと分かっていても、街の持つ魅力や雰囲気、面影が残る街でいてほしい。毎朝、駅から新しい事務所へ歩いていくたびにそんな思いにかられる。