日本が抱える不動産問題に立ち向かえ!「空き家」活用のススメ

空室率上昇にストップ!「コミュニティ再生」で古い団地に多世代を呼び込む

■団地の再生が加速。多様な世代が集まる

1955年、現在のUR都市機構(独立行政法人都市再生機構)の前身である日本住宅公団が設立され、都市部で働くサラリーマンに住宅を供給するための「団地」の整備がスタートした。

第二次政界大戦後の復興やベビーブーム、高度経済成長期などにおいて、都市部を中心に日本の住宅は深刻な供給不足に陥ったからだ。団地だけでなく、地方自治体による公営住宅、民間による団地やニュータウンなども後押しして、住宅不足は解消されていった。

団地再生で地域活性化を狙う

団地は東京であれば高島平団地、光が丘団地、埼玉県では東松山市の「パークタウン五領」やふじみ野市の霞ヶ丘団地、上野台団地など、今も数多く残っている。しかし、そのほとんどは建物の老朽化が激しく、交通の便の悪さやライフスタイルの変化などもあり、空室率が上昇する傾向にある。

残された居住者の高齢化も深刻だ。医療や介護の面からも団地暮らしはリスクが高い。入居者が少なく、若い世代より購買意欲に劣るシニアが多いエリアとなれば、外食や小売りも出店を見送り、むしろ撤退するケースも少なくない。

言うなれば、団地エリア周辺は局地的な過疎化が急速に進展しているわけだ。しかし、行政や民間は看過しているわけではない。建物をリノベーションして若い世代を呼び込んだり、広大な敷地を活かし、高齢者向けの施設を開設して医療・介護のアクセスを良くするなど、様々な取り組みが広がっているのだ。

買い物難民のシニアに対して、出張販売を実施する大手コンビニや中小事業者も出てきた。そういった一部の団地については、コミュニティの崩壊や住人の減少にも歯止めがかかる傾向があるという。

■UR都市機構画が推進する「ミクストコミュニティ」の取り組み

具体例を挙げよう。UR都市機構が積極的に取り組むのは、子どもや若者、子育て世代、中高年、シニアまで、幅広い世代が暮らし続けられる住まい・街づくりを目指す「ミクストコミュニティ」だ。

ここでは、政府が進める「地域包括ケアシステム」の構築を、UR都市機構がサポート。高齢者に使いやすい安全な住まいや健康維持に資する環境づくりに注力する。加えてデザイン性の高い住戸へのリノベーション、子育て世代への家賃割引、保育園や子育てサロンも設置するなど、現役世代にとっても住みやすい環境に配慮している。

例えば東京都板橋区の高島平団地では、2014年にサ高住の「ゆいま~る」シリーズを展開する株式会社コミュニティネットと提携して、「ゆいま~る高島平」をオープンした。一棟に一般住戸とサ高住が点在する分散型のタイプで、高齢者にとっては社会と切り離された感覚がなく、多世代が暮らしやすい仕組みになっている。

東京都東久留米市の滝山団地では、既存の集会所を改修して、居住者の見守りとコミュニティづくりの拠点となるカフェを、自治体とURが開設。ボランティアスタッフを募ったところ、近隣の住民や福祉を学ぶ学生が参加するようになり、多世代間のコミュニケーションが生まれたという。

こういった取り組みはUR都市機構に限らず各自治体でも行われている。空き家は、戸建てだけの問題ではない。多くの住戸を持つ団地が息を吹き返し、幅広い世代が集まるコミュニティが復活すれば、街全体が活気を取り戻すことにもつながりそうだ。

(参照:古い団地のコミュニティ再生。周辺は賃貸エリアとして有望になる?

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