大相続市場の登場を目前にした住宅不動産業界の課題

大相続市場の登場を目前にした住宅不動産業界の課題(3)

住宅・不動産会社が相続市場で果たすべき責務

 ハイアス・アンド・カンパニーが運営する新・不動産ネットワーク「不動産相続の相談窓口」は、不動産コンサルティングのビジネス化を目指し、不動産相続に関する知識と顧客の相談に応じるためのコンサルティングスキル、多様なソリューション提案力を備えることで、地域の地主や富裕顧客から自宅や遊休地、収益資産などの不動産資産に関する相談をいただく窓口となる地域密着不動産ネットワークだ。

 家計資産の約7割は高齢者層が保有しており、「資産移転市場」という巨大市場の発生が見込まれる。その資産の規模は平均で年間37兆円(12年・日本総研)という試算もあり、不動産資産が動く相続を商機とするべく着々とネットワークを広げている。

 相続をめぐるトラブルは増え続けています。一般のお客様はそもそも相続についてあまりに無自覚で無防備です。ご家族の永続的な幸せと大切な資産の維持のためにも、相続については財産の多寡にかかわらずすべての世帯で準備しておくべきです。では、どう準備するか。相続準備には専門的な知識が不可欠です。特に注意すべきは不動産の扱いです。既に相続分野に積極的に関わっている不動産のプロが存在します(本書では従来型の営業スタイルとは一線を画し、中立公正なスタンスで不動産取引や相続相談にあたっている不動産相続のプロたちの事例を紹介しています)。

 不動産は地域に根差したものです。地域ごとに歴史があり特性があります。そう考えると相続等に際しての不動産の相談は、地元を知り尽くした地元の会社が行うべきです。そもそも地元の住宅・不動産事業者の経営基盤は地元の不動産価値です。不動産は、地元に存在し続け地元で流通します。つまり、地元の不動産の資産価値が下がり続けることは地元の住宅・不動産事業者にとっては経営基盤が弱くなっていくことにほかなりません。地域の活性化こそが地元の住宅・不動産事業者の生命線です。地域の不動産を適正に維持管理し、最適な利用をして、価値を落とさずに次世代に承継していくこと。これは地元の住宅・不動産事業者が経営を維持していくためにもとても重要なことなのです。適切な相続対策を取らなかったために相続人の間でもめ事が発生して、引き取り手が決まらずに不動産が放置状態になったり、空き家になる住宅が増えたりすることは地域の不動産価値を低下させていくことにもつながります。相続市場への参入はビジネスチャンスというよりも、地元の不動産価値を守り、自社の経営基盤を守るためです。地域のお客様がいずれ相続を迎えるときに直面するであろう問題にプロとして事前に関与することが大事なのです。

『家族の幸せと財産をつなぐ不動産コンサルティング~もめる相続 もめない相続 カギとなるのは不動産~』

○著者=川瀬太志・矢部智仁・不動産相続の相談窓口プロジェクト
○発行=住宅新報社
○定価=1200円(本体、税別)

 不動産相続の相談窓口では「新・不動産ネットワーク 不動産相続の窓口事業説明会」を全国各地で開催している。詳しくは、「不動産相続の相談窓口セミナー」を参照

川瀬 太志(かわせ ふとし)

大和(現りそな)銀行、大手経営コンサル会社を経て、05年ハイアス・アンド・カンパニー(株)の設立に参画、取締役に就任。個人が安心・納得して住宅を購入・運用・売却できる環境づくりに取り組み、全国で個人向けの勉強会なども実施している。