大相続市場の登場を目前にした住宅不動産業界の課題

大相続市場の登場を目前にした住宅不動産業界の課題(2)

相続マーケットのふたつの誤解

 ハイアス・アンド・カンパニーが運営する新・不動産ネットワーク「不動産相続の相談窓口」は、不動産コンサルティングのビジネス化を目指し、不動産相続に関する知識と顧客の相談に応じるためのコンサルティングスキル、多様なソリューション提案力を備えることで、地域の地主や富裕顧客から自宅や遊休地、収益資産などの不動産資産に関する相談をいただく窓口となる地域密着不動産ネットワークだ。

 家計資産の約7割は高齢者層が保有しており、「資産移転市場」という巨大市場の発生が見込まれる。その資産の規模は平均で年間37兆円(12年・日本総研)という試算もあり、不動産資産が動く相続を商機とするべく着々とネットワークを広げている。

 巨大な資産移転市場をビジネスに生かすための起点として「相続」は不動産事業者や建築事業者にとって魅力的なはずです。しかし現実にはこれまで相続を本格的にビジネスにしようとしている会社、もしくはすでに出来ている会社は決して多くはありません。そこには、カスタマー側と事業者側の相続に対する誤解があります。まず、多くのカスタマーは自分が相続トラブルの当事者になるということを現実的に認識できていません。相続でもめるのは資産を数億円持っているというような資産家だけだと誤解しています。しかし実際にはそうではありません。司法統計によると裁判にまでなってしまう相続事件の75%は遺産額5000万円以下です。何でもめているかというと「遺産分割」です。例えば、相続人である兄と弟がそれぞれどの財産をどれくらい受け継ぐのか、そこに不公平感が生じてこじれてしまうと争いになります。相続トラブルはすべての人に起きうることなのです。しかも遺産の7割は不動産。一番分割しにくいのも不動産。つまり相続でもめないためのカギは不動産の扱いを決めることです。それであれば、相続において相談すべき専門家は不動産と地域について詳しいことが必須になります。それは地域にねざして活動している不動産事業者や建築事業者に他なりません。しかし、事業者側には「相続は儲からない」とか「相続は時間と手間がかかる」という誤解があり、これまでは積極的に相続マーケットに働きかけてきませんでした。そんな中、相続税の改正などもあり、カスタマーの相続への関心が年々高まってきました。そして、先見性のある不動産事業者や建築事業者が相続市場に対して真面目に取り組み始めています。相続マーケットを短期的な視点ではなく、長期的な視点でとらえた時、「相続は十分ビジネスになる」と気付き始めました。時代は時々刻々と変化しています。今や「相続は我々こそが窓口となるべき」という考えを持つ不動産事業者、建築事業者が現れてきているのです。

『家族の幸せと財産をつなぐ不動産コンサルティング~もめる相続 もめない相続 カギとなるのは不動産~』

○著者=川瀬太志・矢部智仁・不動産相続の相談窓口プロジェクト
○発行=住宅新報社
○定価=1200円(本体、税別)

 不動産相続の相談窓口では「新・不動産ネットワーク 不動産相続の窓口事業説明会」を全国各地で開催している。詳しくは、「不動産相続の相談窓口セミナー」を参照

川瀬 太志(かわせ ふとし)

大和(現りそな)銀行、大手経営コンサル会社を経て、05年ハイアス・アンド・カンパニー(株)の設立に参画、取締役に就任。個人が安心・納得して住宅を購入・運用・売却できる環境づくりに取り組み、全国で個人向けの勉強会なども実施している。