大相続市場の登場を目前にした住宅不動産業界の課題

大相続市場の登場を目前にした住宅不動産業界の課題(1)

地域の価値を自ら高める業界へ

 ハイアス・アンド・カンパニーが運営する新・不動産ネットワーク「不動産相続の相談窓口」は、不動産コンサルティングのビジネス化を目指し、不動産相続に関する知識と顧客の相談に応じるためのコンサルティングスキル、多様なソリューション提案力を備えることで、地域の地主や富裕顧客から自宅や遊休地、収益資産などの不動産資産に関する相談をいただく窓口となる地域密着不動産ネットワークだ。

 家計資産の約7割は高齢者層が保有しており、「資産移転市場」という巨大市場の発生が見込まれる。その資産の規模は平均で年間37兆円(12年・日本総研)という試算もあり、不動産資産が動く相続を商機とするべく着々とネットワークを広げている。

 これからの日本では、常に新しい投資をし続け資産を形成する構造のフロー型経済から、蓄えた資産を背景にした豊かさを享受するストック型経済への移行が求められています。その一つの背景である少子化や高齢化の進行で、住宅不動産の総需要も右肩上がりに伸び続ける市場ではなくなります。そうした構造的な変化を受け止め、住宅不動産業者もこれまでのようにスクラップアンドビルド、売ったら売りっぱなし、顧客より自社の利益を優先する仲介といったやり方を脱しないと将来はありません。

 住宅不動産という、個人が持つ最大の「資産」の価値を維持向上させることに貢献し、真の資産化を図ることで豊かな暮らしを実現することは、住宅不動産業に関わるものの大きな責任です。

 しかし、現実には売りたいように売れない既存住宅市場、需給バランスを欠く新築住宅建設市場、それらに起因する新しい社会問題である空き家問題への対応不足など産業を取り巻く課題が、住宅不動産の資産価値向上の阻害に直結しています。こうした産業構造や地域社会との関係を自ら変え、評価される既存住宅市場の形成、評価に値する適正な品質と量を備えた新築住宅供給の実践、そして地域の不動産価値を高めるための利活用促進や住生活関連サービス産業への進化を果たすことで、顧客である地域住民の資産価値を守る産業に進化を遂げるべきなのです。

 今回の「相談窓口」が提唱する考え方は、エリアマーケティングをベースとする地域密着型の住生活関連サービスを実践していた企業では当然のやり方だったはずだと考えています。いわば住宅不動産業にとって原点回帰を促す取り組みとも言えます。地域の不動産価値を自らの取り組みで高める業界への進化を期待しています。

『家族の幸せと財産をつなぐ不動産コンサルティング~もめる相続 もめない相続 カギとなるのは不動産~』

○著者=川瀬太志・矢部智仁・不動産相続の相談窓口プロジェクト
○発行=住宅新報社
○定価=1200円(本体、税別)

 不動産相続の相談窓口では「新・不動産ネットワーク 不動産相続の窓口事業説明会」を全国各地で開催している。詳しくは、「不動産相続の相談窓口セミナー」を参照

矢部智仁(やべともひと)

㈱リクルートを経て2014年ハイアス・アンド・カンパニー㈱に入社。前職から住宅不動産市場の調査研究業務に携わり、行政機関設置の委員会メンバーなども歴任。不動産業界のこれからについて発信している。