ど素人から金持ち大家さんになった人々

第5回 「入居者からの紹介」で20年以上空室ナシのライター大家さん

中川寛子さんのプロフィール
東京都大田区生まれ。両親の田舎が大家という家系で、不動産賃貸業に親しみを感じながら育つ。早稲田大学教育学部社会学科卒業後、編集プロダクションに入社。リクルート社の住宅情報誌、同賃貸情報誌の編集を外部スタッフとして担当する。
20代後半から、世田谷区内の区分マンションを買い始め、少しずつ家賃収入を増やす。現在は「東京情報堂」の代表として、不動産関連の執筆やセミナーなどで活躍中。

■ 一戸目を購入したのは20代後半のとき

――自己紹介をお願いします。

中川寛子さん 
本業はライターです。不動産投資の本では、共著で「 ど素人がはじめる不動産投資の本 」というものがあります。個人の体験談以外の初心者向けの本がなかったので企画しました。3・11以降は地盤に関するセミナー等も行っています。

大家としては、20年以上前から東京・世田谷区内の区分マンションを複数、所有しています。世田谷区ばかりなのは、知人の家や飲み屋さん等に行く機会が多く、土地勘があったから。区分が好きなのは、ラクだからです。ずっと自主管理ですが、大きなトラブルもなく順調に運営できています。

――不動産投資を始めたきっかけを教えてください。

中川寛子さん 
父方も母方も実家が大家業をしていたので、社会人になると「不動産を買って貸す」ことを自然に考えるようになりました。一戸目を購入したのは20代後半で、もう20数年前になります。仕事が忙しく、毎日帰りが遅かったので、いつの間にかお金が貯まっていました。

最初の物件は世田谷線沿いのワンルーム。貯金に親から借りたお金をプラスし、不足分はローンを組みました。それ以来、「いいものがあれば買う」というスタンスで、少しずつ買い増しています。

――不動産を買うときは、どんな基準で選んでいますか?

中川寛子さん 
基本は、交通の便がいいこと、安全な場所に建っていること、女性が借りやすいことの3つです。男性は部屋そのもので選びますが、女性はそれ以上に、街や周りの雰囲気を重視します。

空室が心配ではないかと聞かれますが、ずっと賃貸情報誌の仕事をしていたので、「ここならこれくらいで決まる」というラインがわかります。ですから、不安はあまりありませんでした。不動産の売買に抵抗がないので、20数年の間には、購入だけでなく、売却の経験もあります。

■ ネットで買い物件を判断しやすい時代

――物件はどんな方法で探していますか?

中川寛子さん 
今はネットで地道に見ています。昔は収益物件専門の媒体がまったくなかったので、マイホーム用の不動産情報誌の中から、賃貸に向いたものを探していました。池尻大橋にある物件を買ったときは、新聞の折り込みチラシがきっかけ。翌日のオープンルームに朝イチで出かけて、「買うから少しまけて」と言って、その場で買付を入れました。

掘り出し物って、普段から市況を見ていないと見つけられませんよね。私は仕事で長年、不動産にかかわってきて相場観があるので、決めるときは即決です。昔と違い、今は現地まで行かなくても、グーグルマップなどで「ここにお墓がある」「ここに工場がある」といった情報を確認できますから、判断しやすくなりました。

――掘り出し物でも、バブルの頃の不動産は、かなり高かったのではありませんか?

中川寛子さん 
今と比べると高かったですね。でも、値段が下がってから買い始めたため、キャッシュフローはすべてプラスです。それに、私は子供の頃から祖父や祖母の仕事を見て、「大家って店子さんのお世話をして大変なわりに儲からないなあ」と思っていたんです。

自分が大家になってからも、数字だけを追いかけるという発想はありません。自主管理なので、それよりも安定的に埋まって、手間をかけずに運営できることの方が大切です。

■ 退去者が次の入居者を連れて来てくれる

――仕事をしながら、自主管理をするのは大変ではありませんか?

中川寛子さん 
管理は一人でしていますが、そんなに大変ではないですよ。入居者さんの募集を紹介形式にしているので、店子さんは私の知り合いか、その知り合いだけ。連絡はメールで取り合っていて、特に手間がかかる方はいません。

つい最近も、「エアコンが壊れた」というメールが届いたので、「近くの電気店で○万円くらいのものを買って取り付けてください。お金はあとで請求してください」と返信しました。基本的に、何かあれば入居者さんに自分で解決してもらっています。

――それで入居者さんからクレームは出ませんか?

中川寛子さん 
出ませんよ。入居前に、物件のいいところも悪いところもすべて伝えた上で、それでもよければどうぞとお伝えしていますから。例えば、世田谷線の上町の物件は駅から距離があるけれど、バス便があるから街への移動は便利。その代わり、年末はいつも246が渋滞しますよ、というような話です。

他にも、原状回復ナシで入ってとか、水道管の清掃のときは部屋にいてとか、損害保険は自分で入ってとか、勝手なことを言っています(笑)。それでも、今まで1ヶ月以上空室になったことはありません。空室がゼロ日で次の入居者が入ることも珍しくないですよ。

ただ、空室にならないのは、大家として、「空室を作らないようにしている」ことも大きいと思っています。うちの物件は、礼金ナシ、敷金ナシ、手数料ナシ、更新料ナシで、家賃も相場より低めです。少し安くしてもずっと埋まっている方がいいという方針です。

――退去する方が、必ず次の入居者を連れてきてくれるのは、「こんないい部屋を赤の他人に譲るのはもったいない」という気持ちがあるからでしょうね。

中川寛子さん 
それなら嬉しいですね。このやり方ですと、礼金や更新料はいただけませんが、不動産会社さんに支払う広告費、手数料、管理費等が不要で、リフォーム費用も最小限ですむというメリットがあります。私は宅建の資格を持っており、知識があるので契約も自分でしていますし、募集チラシも手作りです。

これまで、ムリのない方法で続けてきましたが、すでにローンが完済した物件もあります。本業の景気が悪くなる中で、区分数戸分でも毎月の家賃収入があることは、精神的な支えになってくれています。

後編:第6回 取材を通じてわかった「人気の街」と「不人気の街」


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