過渡期にあるトランクルームビジネス

ニッチ産業から成長産業へ(1)〜過渡期にあるトランクルームビジネス〜

■ 住空間の豊かさ向上に貢献

「収納ビジネス」というが、その内容は詳しく知られていないので、まず整理をしてみたい。事業は大きく

(1)レンタル収納(ビルインタイプ=トランクルーム) 
(2)コンテナ収納(海上コンテナの活用) 
(3)倉庫業

の大きく3つの分野に分かれる。ここではこの中から、トランクルームを中心に紹介していくが、この表現は業態を正確に表す言葉ではなく、本来は「ストレージ事業」(ストレージは「保管」の意味)といった方がいいだろう。

元々は北米が発祥の事業。「セルフストレージ」事業として、1970年代から拡大し始め、アメリカでは約5万カ所・約1700万室にまで拡大し、10世帯に1世帯が利用する一般に浸透したサービスとなっている(図1)。また、過去35年の中でアメリカの不動産セクションで最も成長率の高い産業だという。

アメリカでは、10世帯に1世帯が利用する一般に浸透したサービスになっている

(図1)アメリカでは、10世帯に1世帯が利用する一般に浸透したサービスになっている

一方、我が国では10年ほどの歴史しかなく、この事業はまだスタートしたばかりと言っていい。では、日本における現在の市場環境と将来予測、さらには成長への課題はどうなのだろうか。そこで業界団体として昨年2月に設立された、一般社団法人日本セルフストレージ協会(JSSA)事務局の渡貫伸二氏に聞いた。

まず、現在の市場と将来性について、渡貫氏は「アメリカの世帯数は日本の約2・3倍ですが、セルフストレージの供給量では約34倍(日本は約50万室)あり、推定市場規模も27倍あります」と指摘する。その上で「日本は住宅が狭く、それ故、収納量も多くありません。今後、認知度が高まり、セルフストレージの活用が一般的になれば、住空間の豊かさを高めることにもつながります」と話す。

そのストレージ事業の中でも、有望なのがトランクルーム。そのメリットについても聞いた。「基本的に無人で営業できるほか、水回り設備などが必要なく、ランニングコストやイニシャルコストの面で他の資産活用よりも(賃貸住宅や駐車場など)有利。また、築年数による家賃(利用料)の低下リスクが少ないのも特徴です」。

一方、デメリットについては、「コールセンターの設置など、運営に細かいサービスやノウハウが必要であること。さらに、他の資産活用事業に比べ収益が小さいケースもあること」などを指摘している。(図2)

事業としてのトランクルームのメリット・デメリット

(図2)事業としてのトランクルームのメリット・デメリット

ところで、協会は

(1)コミュニケーション (国内外のネットワークによる情報交換など)
(2)調査研究 (情報収集やデータ管理)
(3)ロビー活動 (政府などへの要望、政策提言)
(4)教育 (経営者やスタッフ向け)

などを目的に設立された。「ユーザーへの認知度向上はもちろんですが、現在バラバラに運営されている業界をまとめ、法整備やコンプライアンスの確立などにも注力していきたい」という。

(住生活ジャーナリスト 田中直輝)

次回「ニッチ産業から成長産業へ(2)〜過渡期にあるトランクルームビジネス〜」では、トランクルームビジネスに携わる企業の取り組みについてご紹介します。