社説「住宅新報の提言」

都道府県地価調査

地価に左右されない政策を

 地価が、大幅に下がっている。国土交通省が発表した7月1日時点の都道府県地価調査(基準地価)によると、1年前に比べて全国平均で住宅地が4.0%下落、商業地は5.9%下落した。すべての都道府県の住宅地、商業地で平均地価が下がったのは、1975年の調査開始以来初めてのことだ。しかも都市部ほど下げが大きく、東京都区部の住宅地は10.6%、商業地は12.0%となっている。商業地は他の都市圏でも大阪市が11.2%、名古屋市が11.9%、札幌市が10.0%、福岡市が15.9%となるなどいずれも2ケタのダウンだ。
 全用途で下げの変動率が大きかった10地点は、福岡県が31.8%を筆頭に5地点入っているほか、東京都でも港区新橋と港区虎ノ門が28.5%、27.4%と下げが目立っている。
 いずれも08年9月のリーマン・ショックを契機とする景気の悪化、それに伴うオフィス空室率の上昇が顕著になったことが原因となっている。

下げ幅の減速は本物か

 国土交通省では、今年1月1日現在で発表された地価公示と比べると、下がり方は減速しているとしている。また日銀は景気の現状について、8月までの「下げ止まっている」から「持ち直しに転じつつある」へと判断を上方修正した。それでも、地価下落が底を打ったとは誰も思っていないだろう。景気が回復しないまま、10年以降は新築ビルの完成が相次ぎ、オフィスの供給が増えるといった不安要素はいくつもあり、景気の「2番底」を心配する声も上がっている。
 地価は安定的に推移するのが望ましいとする声が多い。大きく下げたり、上がったりすることは決して好ましいことではない。もっと言えば、安定しながらも、ごくわずかずつ、具体的にはGDP程度に上昇していくことがベストであるといった声がある。しかし地価に「安定」はあるのだろうか。グローバル経済の下では、不動産そのものが投資商品として組み込まれ、上げ下げの変動から逃れることが難しい状況も指摘される。

空き家を生かせ

 一方、総務省が7月末に発表した調査によると、住宅総数5,759万戸のうち、実に756万戸が空き家になっている。率にして13.1%。これは地方の実態ではなく、3大都市圏でも空き家は363万戸もあり、率は12.1%だ。
 少子高齢化といった成長路線とは明らかに異なるステージに立っていることを受け止めるならば、長い目で見た時に「地価は従来のようには上がらない」という考えに転換していく必要があるだろう。
 このことは不動産業界にとって必ずしもマイナスばかりではない。消費者にとって土地が手に入りやすくなれば、主だった生活の場である住宅以外にセカンドハウスを持つことも可能になる。
 それはリゾート地かもしれないし、都心と郊外に2戸ということもあるだろう。そこにはあり余る住宅をリフォームして新たな商品として活用する産業の出現が期待できる。
 そのためには政策や税制面でのサポートは欠かせない。鳩山内閣には、国民が地価のブレに振り回されない安心できる国づくりを推進する政策望みたい。