社説「住宅新報の提言」

マンション建て替え 諏訪住宅に見る実現可能性

 東京・多摩ニュータウンの諏訪二丁目住宅で、建て替え決議がされてから1年がたった。築40年、640戸もの団地の建て替えとあって注目を集めている。6月頃を目途に取り壊しが始まり、本格的な着工にこぎつける。
 全国の分譲マンションは、築30年を超えたものが、すでに100万戸を超えている。これまでに建て替えが実施されたのは149件に過ぎない。ハードルが高いのは、5分の4以上の賛成がなければ建て替え決議ができないことに加え、余剰容積の問題がある。これまで建て替えができたマンションのほとんどは、余剰容積を活用して費用をねん出している。
 マンション建て替え円滑化法によって、建て替えが進ちょくしたと言われているが、現行制度のもとで「可能なところはほぼ一巡した」とも言われている。
 そもそも余剰容積に頼った手法は大きな矛盾をはらむ。40年後に再び建て替え問題に直面した時、すでに余剰容積は使い切ってしまっているからである。

既存不適格を除外せよ

 また建て替えに踏み切れないのは、「既存不適格建築物」という扱いを受けるケースが多いからだ。建築当時と法律が変わり、建て替えたら現状の広さを確保できない。「既存不適格」という言い方も印象が良くない。こうした扱いは外すべきである。現に阪神淡路大震災の際は、緊急性もあって除外している。建て替え後は、耐震性も耐火性も向上されるわけだから、防災面からは何ら問題がなく、容積を削減する妥当性は薄い。
高齢者を促す知恵を出す
 複数の人たちが共同で住むマンションは、高齢化問題の縮図でもある。昭和45年以前に建築されたマンションでは、「60歳以上のみ」の世帯の割合が約40%にも上っている。しかも、4、5階建てでありながらエレベーターが設置されているのは、わずか6%しかない。高齢者が住み続けるには、困難をきわめる。
 だからこそ建て替えが必要なのだが、高齢者が住まいの建て替えに踏み切るには、相当のパワーが要求される。工事期間中の仮住まいだけをとっても容易ではない。
 たとえば65歳以上のみの世帯については、国で引っ越し費用や仮住まいの家賃補助ができないものか。こう言うと、一戸建ては自分たちの責任で費用負担しているのにマンションだけ、なぜ優遇するのかという反対意見が出る。もっともである。一戸建て居住の高齢者にも同様の条件で補助をすればいい。
 諏訪二丁目住宅では、周辺の都営住宅やURの賃貸住宅があり、その空き家を一部の仮住まいにすることができる予定だ。そういう恵まれた条件だったことも、建て替えが実行できる要素となった。
 また、同住宅では、日頃から餅つき大会や運動会を行って住民の間にコミュティが出来上がっていた。実は、ここにこそ、建て替えを円滑に進めるためのカギがある気がする。