社説「住宅新報の提言」

未曽有の震災から復旧・復興を期して 希望を育む強力な支援体制を

◎謹んでお見舞い申し上げます

 今回の東日本大震災の犠牲になられた方々には謹んでお悔やみを申し上げます。また、被災された皆さまには謹んでお見舞いを申し上げます。住宅新報社は「すべての国民に、豊かな住まいと幸せを」を創業理念に事業を営んでまいりましたが、今回の震災に際し、数多くの方々が「住まい」を失われたことに鑑み、被災された皆さまの復旧・復興に、微力を尽くしたいと存じます。当社でできることは限られますが、住宅・不動産業界の専門情報機関として、新聞、出版、教育事業などの部門を通じて、被災地の皆さま方に復興への一助となれるよう、改めて気を引き締めて取り組む所存です。

◎改めて将来への備えを

 さて、今回の東日本大震災の被害総額は恐らく世界最大、犠牲者はわが国戦後最悪の自然災害になりそうです。マグニチュード9・0という世界最大級の大地震と、その直後、青森県から千葉県の太平洋岸を襲った大津波は、津波の怖さを伝承して、防潮堤や避難所の設置、さらに住民全体で避難訓練の行き届いた地方をも無惨に破壊しました。
 行政当局や防災専門家・学識者の口から「想像を超える」とか「想定外」という言葉が出てくるのも度々ですが、そこまで想像力が働かなかったことについては、反省する必要があるでしょう。現在の防災技術は、過去の自然災害による貴い犠牲の繰り返しの上に築かれたものです。今回の震災も、地震規模、津波の大きさとも従来の予測や対策の範囲を超えるものだったわけで、改めて将来に向けての備えをしなければなりません。

◎当初の救援は十分だったか

 また、大地震直後の救援・救済活動はどうだったかという視点では、自衛隊の動員要請など、政府や自治体を上げて懸命な努力が払われたことは間違いありません。海外の救援隊も多くの国々から駆け付けてくれました。ただ、その救援活動全体が十分だったかというと、そうとは言い切れないところもあります。2000数百を数える避難所、更にお寺などの自主的な避難場所、更に損壊を受けた自宅での待避者。それぞれに救援物資が届いたかどうか、また、それが十分だったかどうかという問題が残ります。
 交通が遮断された山間部や島嶼部では、相当な時間が経ってからの救出が伝えられたりもしました。町役場や市役所が津波の直撃を受けて、住民の被災状況から避難場所まで把握できない状況かあったのも事実です。被災エリアが非常に広域だったとはいえ、もっと早く救援の手を差しのべることができなかったのかどうかの検証も必要です。

◎原発事故と電力不足が招いたもの

 そして、今回新たな問題として深刻な影響を与えたのが、福島第1原子力発電所の事故です。この原発事故では、「安全な原子力神話」は跡形もなく崩れました。原発周辺の20キロ、30キロ圏の住民には避難指示などが出され、地震、津波、原発、更に風評被害に加え、放射性物質による農業、漁業被害も現実化。その地域住民は更に近県や首都圏などへの避難を余儀なくされています。こちらも段階的な救済策を講じなければなりません。
 同時に原発事故は、深刻な電力不足を招きました。首都圏では「計画停電」が市民の生活や経済活動を直撃し、長期化の様相を見せています。一方で、市民に節電意識や助け合い、分かち合いの精神が少しずつ芽生え始めています。未曾有の大災害がいい意味で、人々の気持ちに変化を与えてもいるようです。

◎住宅・不動産業界も幅広い支援体制

 今回の震災に対する住宅・不動産業界の対応には素早いものがありました。支店営業所などがある企業はもちろん、全国組織の業界団体などが支援の輪を広げています。義援金や救援物資の寄付のほか、建築の専門家などの人材を派遣しています。更に政府の要請に基づき仮設住宅の建設や仮住まい用の賃貸住宅情報の提供など、幅広い支援体制に入っています。我々もこうした支援を側面からバックアップしたいと思います。
 大きな犠牲を払いながらも、今ようやく住宅を含めた復旧・復興への機運が出始めています。震災を乗り越えるには、国を挙げての支援と地域での助け合いや、それを支える希望、光明が必要です。それを指し示すことができるかどうか。それが、応援する我々に今、求められていることです。「がんばろう!日本」です。