社説「住宅新報の提言」

東日本大震災から2カ月 復興は地元が主役の視点で

 東日本大震災が発生してから2カ月。今なお避難生活を余儀なくされている人が約12万人もいる。被災者の生活再建への歩みは、全体的には鈍いままだ。政府が主導して仮設住宅の建設なども進んでいるが、残念ながら十分とは言えないし、地域間による格差も厳然として存在している。広いエリアが被災地域になった大震災だけに、復旧・復興への道のりは平たんではないし、相当な時間がかかることも予想される。
 それだけに、当面は、被災者の救済に全力を注いでもらいたい。生活再建の第一歩は住居と収入を得る、仕事・働く場所の確保である。そのためには官民挙げた強力な支援態勢が不可欠だ。避難所や避難生活から脱出して新たな第一歩を踏み出す人が増えることが被災地の復旧・復興への道筋となり、ひいては日本全体に活力を呼び戻すことにもつながるだろう。

まず地場産業の再興

 津波に襲われた被災地域は岩手県から千葉県まで及び、豊かな漁場を背景とした漁業・水産加工施設は壊滅的な打撃を受け、東北を代表する稲作地帯も塩害を受け、作付けにはめどが立たない。その中で、地元の人たちに再び漁業や農業に取り組む意欲と勇気を与えることができるかどうか、いま政治や行政、更に被災地を応援する我々に問われている。培ってきた経験と知識と技能、更に高めていこうとする意欲を生かさない手はない。まずは、地場産業の復旧・再興への取り組みだ。被災県の県知事も、そう主張している。被災地にうず高く積まれたがれきの山の処理など、課題を1つひとつ解決していくことが必要だ。
 被災地の復旧・復興に関しては、世界経済や日本経済への寄与、道州制などへの構想、地場産業や街づくりの在り方といったローカルな課題まで、様々な角度から議論され、検討されることが大切だ。計画づくりや作業の実際で学識者や専門家、実務家の英知も生かされてくるが、その主役は地元の人たちであるということを忘れてはならない。地域を復旧・復興する担い手は、いつの時代もその土地に生きる人たちで、地域を興してコミュニティを育み、それを次代につなぐことで、独特の個性ある発展が成し遂げられてきた。その意味で、国会での論戦や復興構想会議での検討なども、地元の意向を尊重する、被災地が主役という視点が重要だろう。

原発事故収束に英知を 
 大震災による直接被害額は16兆から25兆円(内閣府試算、福島原発事故含まず)といわれ、復旧・復興には相当巨額な資金と時間がかかる見込みだ。将来像という青写真も必要だが、当面、急ぐ必要はない。今や日本全体に重くのしかかっているのが東電福島第1原発の事故だ。地元自治体と住民は、事故による放射能禍にほんろうされ続け、避難所を転々とした揚げ句、いつ自宅に戻れるか分からない状況に追い込まれた。
 これは地元福島県というより、世界が注目する我が国最大の難題にもなった。この難問をどう収束させることができるか。原発問題が、被災地の復旧・復興の妨げにならないよう、関係者の英知を結集してもらいたい。