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大言小語 無電柱化

 自宅前の幹線道路沿いに、多くの電柱が並んでいる。近年は大型台風などの異常気象が頻発して、電柱の倒壊も珍しくはない。気にも留めなかったのだが、よく注視するようになると多くの電柱が傾いて見えてくる。緩やかな傾斜地付近にあるため、目の錯覚なのか、本当に傾いているのか素人には分からない。気になり始めると確信に迫りたくなる。電柱を下から見上げたり、遠目から他の対象物と水平、垂直を比べたりもした。

 ▼そうこうしているうちに、確実に傾いているという1本を見つけた。確信に満ちた1本が見つかると、他の電柱の傾きも確信に変わっていく。電力会社に問い合わせたところ、緊急性を感じたのか現地まで目視調査に来てくれた。電力会社によると、電線の重さや地盤の状況などで基本的に電柱が傾くことはままあることで、構造上、倒壊の心配はないとの説明だった。危険性がないのは分かったが、垂直であってほしいものが傾いているのはやはり気持ち悪い。

 ▼行政も防災や景観に配慮したまちづくりという視点から無電柱化に取り組んでいるが、コストや法規制の壁は高いようだ。こうした中で25年度までに全国約4000キロの区間で電柱を地下に埋設する新たな推進計画を国が打ち出した。しかし、年間約7万本の電柱がいまだに新設され続けていることも無電柱化の進まない一因だと知って期待は失望に変わった。