▼米国で「伝説の経営者」と言えば、ゼネラル・エレクトロニクス社のCEOを務めたジャック・ウェルチ。彼は、業績を上げた管理職でも企業の価値観に従わなければクビにするという考え方だった。業績より価値観を重視した。
▼裏を返すと、企業トップは共有すべき価値観を社内に示さなければならない。価値観を共有できれば、現場が自立的に動いても組織全体で一貫した行動が取れる。
▼イノベーションを起こすには、フェイス・トゥ・フェイスでのやりとりが重要であることが経営学で実証的に明らかになりつつある。組織のメンバーが一緒に学習するより、バラバラに学習した成果を持ち寄り、お互いに「誰が何について知っているか」を共有する方が、組織の知識の総量が多いという研究もある。
▼家でも職場でもないサードプレイスは、様々なバックボーンを持つ人が集う。大企業は、オフィスにカフェやライブラリーなどちょっとした遊びの空間を設けることが多くなった。入山章栄早大教授によれば、偶然の出会いが多様な情報を効率よく収集する方法なのだという。立ち話や雑談の中から、新しいアイデアは生まれるが、それは、価値観が共有できてこそ。価値観が共有できてなければ、単なる息抜きでしかない。
▼社員は息抜きばかりでアイデアが上がってこないと嘆く前に、社員と価値観を共有できているのか、トップ自らが振り返る必要がある。