早いもので今年も残り1カ月を切った。年末に近づくと、1年間を振り返る話がよく聞かれるようになるが、不動産業界には残された課題が山積しているように思う。
▼昨年10月にスタートした新・セーフティネット住宅の登録が思いのほか進んでいない。「安心R住宅」も発足したが、その効果に対する懸念も払拭されていない。インスペクション制度は4月の宅建業法改正で説明が義務化されたものの、一般国民の認知度は低く、その活用方法がよく理解されているとは言い難い。
▼更に、所有者不明土地をどうするかという壮大なテーマが浮上したが、今のところその解決策としての落としどころは不透明だ。このように住宅や不動産にかかわる問題が混とんとしているのはなぜだろうか。現代社会の最大の特徴は国の将来像が不透明であることだが、そうした中で庶民は自分の生活を守るために防衛態勢に入ろうとする。その際、最も頼りになるべき不動産に対する信頼までも揺らぎ始めたということではないか。
▼とはいえ、慌てることもない。新しい年は確かにやってくるが、そこで区切りをつけなければならない問題でもない。難問だからこそ、2年越し、3年越しの粘り腰で対処したい。なにしろ、誰もが保有したがらないような〝所有者不明土地〟が九州全土ほどもあるという異常事態なのだから。