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酒場遺産 ▶87 横浜関内 Roundabout 創業10年余りも空気感は遺産

 横浜のベイエリア、関内の繁華街から少し離れた街区の角地のビル2階に、「ROUNDABOUT(環状交差点の意)」と書かれた、大きな額縁の中に店内が丸見えの酒場が現れる。階段を上がり2階のバーの扉を開けると、10席ほどの「オールドロック居酒屋」がある。左手にカウンター席、右手の大きな窓の前にはテーブル席があるが、すぐに常連で一杯になるのでタイミングが悪いとなかなか入れない。僕も事前に電話を入れたら「いま空いてますよ」と言われ5分後に到着した時は既に満席だった。3度目の訪問で、念願叶って入ることができた。

 創業10余年だから「酒場遺産」には年数が足りないが、店中の壁に掛かるロックスターの大小無数の額入り写真、70~80年代ブリティッシュロックが掛かる独自のカルチャー、店主と常連客の醸し出す濃密な空気感は、この場で積み上げられたであろう時の厚みを感じさせる。トイレの壁も隙間なくロックコンサートのポスターが貼られている。店主の関田真一さんは飲食業界で長く働いた後にこの店を開いた。「居酒屋として一流であってロックはあくまでも付加価値」という。自ら「まごころ居酒屋」と言っているらしい。料理は店主がこだわり抜いたと思われるものばかりで、酒類は麦酒、ウイスキー、バーボン、焼酎など一通りそろえているが、聞いたことのない焼酎のボトルも多い。

 料理を紹介すると、烏賊軟骨のバター醬油炒め、牛シマ腸ホルモン炒め、鰻たっぷり厚焼き玉子、ササミの自家製トマトソース煮込み、モツのコチュジャン煮込み、すき焼きみたいな厚焼き玉子、三崎産茹でたて茎わかめ、煮込み、昆布だしの枝豆、自家製鶏皮のスモーク、豚端の塩胡椒焼き、バジルの入ったわらじ型のつくね、胡瓜と塩昆布の胡麻油和え、牛もつとお野菜の塩煮込み、こんにゃく鷹の爪炒め、空心菜のナンプラー炒め……、どれも想像を掻き立てるネーミングだ。500~1000円と手頃な価格だが、名前負けしない美味さだ。(似内志朗)