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彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇124 人より短い住宅寿命 THK査定システムが問う 日本の不幸の根本か

 国連の世界幸福度ランキングによると日本は低位国の常連だ(24年版は4ランクダウンして51位)。それに対して声高な反論が出ないのは、日本人自身がそう納得しているからだろう。その理由の根本には住宅の在り方が絡んでいるとずっと考えていたがハロー・ニュース(東京・日本橋、吉松こころ社長)がこのほど制作した『良質な住宅が増えれば国のチカラになる』という小冊子(写真)を読んで、その想いを強くした。

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 冊子は一般社団法人建物評価研究機構がこの4月にリリースした「THK住宅査定システム」について解説したものだが、吉松社長が一級建築士の金堀健一氏(同機構理事)にインタビューした内容が読みやすい対談形式でまとめられている。

 住宅の資産価値を評価するシステムは既にいくつかあるが、不動産鑑定士専用だったり、不動産業者にとっては手間がかかったりして、あまり普及していないのが実情である。その点、THKシステムは国土交通省が公表している都道府県ごとの平均単価(再調達原価)をベースに、住宅の傷み具合や設備のグレード、建築資材の仕様、リフォーム歴、耐震性、断熱性などの評価をコンピューターに入力すると査定価格が自動的に算出される。

 つまり、仲介や買い取り専門業者にとっても扱いやすいことが最大の特徴だ。

 査定する部位は基礎、躯体、屋根、外部建具、内部仕上げ(床・壁・天井)など12部位で、そこに使われている建材が上級、中級、普及品かの3段階で評価される。その「査定システム品質表」を見れば業者だけでなく一般ユーザー(住宅の売り手・買い手)でも算出された査定価格に納得がいく仕組みになっているのも魅力である。

〝四方良し〟 吉松氏「適正な評価は、売り主や誠実な不動産業者にとってはもちろん、評価の中味が分かるという意味では買主にとっても、良質な住宅を買う判断材料になりますね」

 金堀氏「本当に良い家やリノベーションが評価されるので、売主・買主・不動産業者・建設会社のいずれにもメリットがある〝四方良し〟のシステムになると確信しています」

 とはいえ、本当に普及するのか。一日でも早く成約したい不動産業者が、これまでの慣習である築年評価(木造戸建ては築約20年でゼロ)から脱却し、新システムを使い、かつその査定結果についてユーザーに説明する手間をわざわざ取るだろうかという懸念は残る。だから、吉松氏もこう質問する。

 吉松氏「そんな状況でTHKシステムを使ってもらうにはかなりの根気と不動産会社側の意識改革が必要ですね」

 これに対する金堀氏の答えを要約すればこうだ。

 「希望はある。なぜなら今の査定方法ではよくないと訴える不動産業者も少数派だが存在すること。『無料一括査定』で苦戦している事業者も多い。また(実際の価値を評価しない)今の不動産の売り方は良くないと考えている業者がいるということ。そうした業者にとって売り主、買主双方に利点があるTHKシステムは、きっと営業の武器になる」

 多岐に渡った対談は最後にこう締めくくられる。

 吉松氏「THK住宅査定システムが普及すれば、どんな社会が実現できると思いますか」

 金堀氏「良質な中古住宅が適正に評価され、中古の流通が欧米並みに促進される。消費者が(住宅について)値段以外のモノサシを持てるようになり、良質住宅の建築や良質リフォームが促進され、結果的に空き家が減ると思います」

 対談後のコメントで金堀氏はこうも述べている。

 「戦後、日本の木造住宅は30~40年のスクラップ&ビルドを繰り返し、人口増加と共に経済大国にのし上がってきた。しかし、その裏側で欧米への憧れや新しもの好きな国民性も相まって、日本独自の住文化が失われていった。四季を映す日本の豊かな住文化を取り戻すためには、義務教育における住教育の採用と、適正な住宅査定システムの普及が欠かせない」