売買仲介

不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編49 ~畑中学 取引実践ポイント~ 「未越境と共有の対応(1)」 権利侵害を適格に判断して説明

 隣地からの越境、隣地への越境がある場合は所有権等の権利侵害があるために、現地調査時に発見次第、所有者と相談をして、隣地所有者との間で解消できるのであればしておきたい。ただ、解消までの時間が足りない、交渉に時間がかかる場合は、売買契約時までには買主との間で権利侵害に関する取り決めをしておき、その旨を売買契約書等に記載しておく必要がある。

 具体的には、(1)越境を引き渡し時までに解消する、(2)将来その越境を解消する、(3)越境は解消せずそのままとして買主はそれを認める、主にこの3点のどれかの記載になる。樹木の枝の伐採や簡単に対応できる解消方法なら(1)の引き渡し時までの解消とすることが多い。引き渡し前に買主に越境の解消を確認してもらい引き渡しを行う。

 越境しているものが塀や工作物など越境状態の是正に費用がかかるものや、交渉や対応に時間がかかるものは、(2)の将来越境を解消する、とすることが多い。隣地との間で越境をしている状態を確認した上で、たとえば「将来塀をつくり直す際に越境を解消する」、「将来第三者に売却等をしてもこの合意は第三者へ継承させる」などと記した覚書を作成し隣地所有者と取り交わして、それを引き渡し時に買主に交付することを記載する。ポイントは引き渡し時までに越境を解消しないので、どのような時に越境を解消するのかを明記することだ。できるだけ具体的な記載が好ましい。

 また、越境状態の解消に費用がかかる場合はその負担をこちらで行うのか、隣地所有者で行うのかを取り決めておく。当然、売却や相続で所有者が代わった場合にもこの覚書が有効となる一文は入れておこう。

 一方で越境の解消が見込めない、もしくは売主が労力や費用面で越境の解消を行わない場合は隣地からの越境、隣地への越境はそのままとする、として買主に説明をする。権利侵害が起きている状態なので、それに伴って今後起きうることも合わせて説明が必要となる。例えば「再建築時には特定行政庁から越境解消を指示されることがある」などだ。

 筆者の実例では家を建て直すに当たって隣家建物の軒が1~2センチほど越境している状態を解消するように区役所の建築指導課から指示があったことがある。売買契約時には軒を縮めての越境解消は、隣家は消極的で、かつ売主も費用や労力を踏まえると解消は難しいと考えて、越境はそのままとして買主と契約をした次第であった。その時も建築指導課からは軒の越境解消は再建築条件の1つとして上げていたため、その旨を売買契約書に記載しておいたので買主は不満を漏らさなかったが、そうでなければクレームとなったところだ。注意をしたい点だ。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。