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酒場遺産 ▶37 清澄白河 だるま 庶民文化とハイカルチャーつまみに

 都営大江戸線と東京メトロ半蔵門線は交差する清澄白河駅付近は下町エリアだが、付近には東京都指定名勝の回遊式林泉庭園「清澄庭園」、1995年開館の東京都現代美術館、ヨーガンレールなどがあり、最近ではブルーボトルコーヒーや様々なコーヒー焙煎所、クラフトビール工場、小洒落た雑貨屋や小さなレストランなどが多く、若い人にも人気の垢ぬけた街である。 「だるま」は清澄白河駅から東京都現代美術館へ続く深川資料館通り沿いにある。この辺りは古い蕎麦屋などがあり昭和の風情が残っている。元々この地で小さなスーパーを経営していたご夫妻が、近所にスーパーができたため仕出屋へ衣替えした後に、30年前に居酒屋を開いたという。

 間口は2軒、鰻の寝床のように深く、奥には厨房、その手前に18人ほど座れる大きなコの字カウンター、入口近く小上がりの座卓2つとテーブル2つで14席ほど、キャパは30人あまりだろう。壁一面に短冊メニューが無数に貼られている。一皿300~500円が中心だ。白板には、その日のお薦めの鮪・岩牡蠣・鯵刺し・鯛刺し・馬刺し・〆鯖・エンガワなどの文字が殴り書きされている。日本酒は吉乃川一合418円、酎ハイ類395円、焼酎450円、ビール大瓶(3社)718円。ホッピー白黒、ウイスキー、ワインなど一通りそろえている。料理はどれも美味く海鮮は新鮮だ。

 現代美術館が近いからだろうか、アーチストや美術関係者も多いことが会話から推される。外国人客も多く、庶民文化とハイカルチャー、ローカルとグローバルが自然に溶け合っている。清澄白河の街にふさわしく、明るく庶民的な酒場だ。年の暮れに訪れたが、冷えた身体を吉乃川熱燗が温める。外に出ると、「火の用心!」と拍子木を打つ町の子供たちが、年末の町を歩いていった。(似内志朗)