総合

大言小語 利便性は常識を変えるか

 この仕事に就いて、最も変化したのは、自分の持つ建て売り戸建て住宅に対するイメージだった。コスト削減や差別化、付加価値など随所に工夫を凝らした物件に接する機会が多いからだ。近年増えつつある高価格帯の建て売り住宅の取材は、新たなニーズの掘り起こしが多いに期待される一方で、真摯な企業努力に触れる機会にもなっている――と思っていたが、自分の視野はまだまだ狭く隔たっていたと、つい最近も取材と通じて痛感した。

 ▼超高価格帯の建て売り住宅を供給している事業者の広報担当者いわく「富裕層にとっての注文住宅はフェラーリのようなもの。2台目に持つには良いが、それで日常生活を過ごすのは、意外に不便なもの。例えば車で言えばレクサスのような日常に寄り添う家が必要」。その話を聞き、洋服の歴史を思い出した。

 ▼今では既製服はすっかり市民権を得ているが、洋服自体の歴史を振り返ると、意外に長い間、〝きちんとした服はオーダーメイド〟のような住み分けがなされていたはずだ。しかしいまや、たとえ金銭に余裕があったとしても、フルオーダーで満足のゆく服を仕立てることができる人は少ないとも聞く。間違いがないのは、気に入った服を仕立て屋に持参し、「これと同じ型で」と指定することだそうだ。

 ▼さもありなん、と共感したが、では、比べ物にならないほど大きな買い物である住宅はどうなのだろうか。