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大言小語 広告表示の春

 新生活に向けた期待感が高まる春の賃貸繁忙期。住まい探しに不可欠な不動産広告を目にする機会が多い季節でもある。業界では、いわゆる「おとり物件」の是正に取り組んできた。存在しない架空物件や成約後も募集表示がされたままの物件など、実際に取引ができない物件の広告表示によって不動産店舗に誘導する行為だ。

 ▼いえらぶGROUPの調査によれば、おとり広告について消費者の9割以上が「住まい探しのタイムパフォーマンスが下がる」と回答。更に、おとり広告遭遇後、その店舗での物件紹介を受けるかについては賃貸が4割、売買が2割にとどまる。繁忙期に「成約済み物件があるのは仕方ない」と割り切っている客が一定数いる一方、多くの客が取りやめている状況だ。業界の信頼性を損なうおとり広告は消費者、不動産会社双方にとって無駄な時間を生む。きちんと表示ルールに従う事業者に対してもアンフェアであり、是正されるべきだ。

 ▼DX活用は一つの対策として期待される。他方、掲載後の対応をポータルサイトに全て任せる姿勢も正しくはない。広告表示は必要な情報が正しい条件下で消費者に届くことが前提。サイト掲載後の表示が正しいものか不動産事業者はチェックし続ける責務がある。この4月からは建築物の省エネ性能表示制度も始まる。集客に必要かつ有効な広告表示について、体制整備や適切な運用を考える季節でもある。