総合 売買仲介

不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(43) ~畑中学 取引実践ポイント~ 根拠を示して媒介契約を取得 机上で整合性を追求「価格査定(1)」

 不動産取引での価格査定の活動目的は、売主が納得同意できる価格帯の中で、買主が購入しようと思える価格を提示し、媒介契約を取得することだ。そして価格査定とは媒介契約から売買契約まで導ける成約想定価格、つまり売れる価格を出すことと言える。時価そのものにこだわらずとも問題ない。時価よりも高くとも安くともこの金額なら成約にできるという価格を出せれば仕事としては十分だ。

 逆に時価とは言え、成約できない価格を提示しても不動産取引上では意味がないので、時価と成約想定価格の金額差が大きい場合は、迷うことなく成約想定価格を取ろう。また私たちは常に高い価格へ引っ張る売主と安い価格へ引っ張る買主の中間にいて成約価格を模索していく。そのため私たちが価格査定で行うことは、エリア相場や不動産の特徴など、売主と買主が納得同意できる価格の根拠を見つけ、その根拠を価格にひもづけて説明できるようにするということになる。

 これにより売主と買主は歩み寄って成約まで至ることができるようになる。

 以上、筆者が考える価格査定の活動目的と定義、私たちの行動原理について述べた。 簡潔にいうと(不動産取引全体の主目的である)売主・買主の納得同意をベースに、目的は媒介契約の取得(その先に売買契約)、定義は成約価格を出すこと、行動原理は成約価格となる根拠を見つけ、それを説明できるようにすること、になる。そして、これらを軸にして私たちの具体的な行動を決めていくことになる。今回からこの考え方をベースに(1)机上査定、(2)現地査定、(3)売主との対話、見せ方、と複数回に渡って価格査定について書かせていただくことにする。

 まず、価格査定で行うのは(1)机上査定だ。売主から問い合わせ、相談があった場合にまず行う。査定方法は各社によって異なるが、まず初めは住所から住宅地図、登記事項証明書を取得した上で、面積や土地建物形状、周辺状況といった概要を把握することから始める。土地形状は整形か、違法建築ではないか、道路との高低差はあるか、近隣に迷惑施設がないかなど買主が購入の際に「安くないと買えない」と増減する要素を抽出していく。続いてレインズなどの取引事例を参照して、「築10年の中古一戸建ては約4000万円前後か」というように相場を見る。その上で土地や一戸建てなら土地のm2あたりの土地単価を取引事例や公示価格、路線価などから割り出し、面積をかけて土地価格を出す。建物は建物面積にm2あたりの建築単価をかけた上で、耐用年数から築年数を引いた係数をかけて建物価格を出していく。そして出そろった土地と建物価格に概要や相場を鑑みて調整をしていき、一戸建てならこの土地価格と建物価格を足して机上査定の価格とする。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。