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酒場遺産 ▶29 神奈川・横須賀 中央酒場 都心にはないオープンさ

 東京都心から少し足を延ばし横須賀へ。品川から京急特快で47分、横須賀は意外と近い。横須賀は酒場文化でも首都圏の特異点だ。米軍基地や海上自衛隊があり、米兵やその家族、白い制服姿の海上自衛隊の人たちを多く見かける。特にどぶ板通りと言われる界隈には、ワンショットのアメリカンバーが立ち並び、一瞬ここが日本であることを忘れさせる。こうしたバーをハシゴするのも楽しい。一方、酒場愛好家の中で有名な「ぎんじ」など、魅力的な老舗酒場も多い。今夜は京浜急行横須賀中央駅近くの「中央酒場」へ。

 昭和28年創業、有名な老舗の大衆酒場で、昼から地元の善男善女に愛され賑わう。まぐろブツなど料理は50種類ほどあり、壁一面にずらりと黒い短冊に白文字で書かれたお品書き並んでおり、どれも手頃な値段だ。若い店員たちは大量の注文をサクサクとこなす。まぐろ刺し、馬刺し、ホルモン炒め、自家製シュウマイ、揚げ物、鍋物、レバニラ、ニラ玉など数え切れないほどの豊富さである。地元の魚屋から仕入れているという鮪はさすがに新鮮だ(三崎港が近い)。黒札は定番、白板にはその日に入った魚多数、なくなり次第消される。こだわりは三冷ホッピー。ホッピー専用冷蔵庫に、ホッピー・焼酎・グラスが冷やされているので「三冷」だ。酒も食も美味い。朝10時開店、夜10時半まで。横須賀を訪れると、筆者は「中央酒場」か「ぎんじ」で飲んだ後、どぶ板通りのアメリカンバーなどをブラつき瓶ビールなどを飲み、汐入のディープ角打ち「ヒデヨシ商店」へ流れるのが定番だ。店に入ると地元客やネイビーの人たちと気やすく話すこともある。都心にはない横須賀ならではのオープンさがいい。(似内志朗)