売買仲介

~畑中学 取引実践ポイント~  不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(40)  スケジュール感を大切に「顧客に判断を任せてはいけない事柄」

 不動産取引の中で顧客に判断を任せてはいけない事柄がある。顧客が正確な情報を把握できず、間違った判断を下すことで、不動産会社のみならず顧客にとってもダメージを被ってしまう事柄だ。

 「物件選びの際はこちらが思う物件に誘導して、顧客のみで判断しないようにする」は某先輩の言葉だが、不動産会社視点では一理あっても、顧客視点だとそうでもない(ダメージを被るとは言えない)ので、物件選びのことではない。

 では何かというと、筆者は「スケジュール感」だと思う。不動産取引は想定したスケジュール通り進まないと契約解除やトラブルに巻き込まれやすく、不動産会社のみならず顧客も何らかのダメージを被ってしまうからだ。

 そのため顧客が正確な情報を元にせず、「この書類は必要となる日の前日に市役所へ取りにいけばよい」「今日中に提出しろと言われたけど、明日の提出でもいいか」と勝手に判断をしないように、なぜそのようなスケジュールで動くのか、書類が必要なのかなど理由を伝えて「お願いしたことは期日までに行ってください。

 また、スケジュールは相談しながら一緒に進めましょう」と(1)期日厳守、(2)スケジュールの共有をお願いしておくことが重要となる。

 その上で、顧客に具体的な動き方をイメージしてもらうために(1)この先、何を判断してもらい、(2)どのような動き方をしてもらうか、(3)準備をしてもらうのかを伝えておくことも必要となる。可能なら紙に書いて渡しておくとよいだろう。

 こう書くのは特に売買契約を結んだ後、売主・買主とも気が緩むためか、売主は(1)書類取得、(2)残置物処分、(3)引き渡し準備で、買主は(1)書類取得、(2)住宅ローンの本審査、(3)売買代金の準備で勝手な判断をしてしまうことがあるからだ。

 例えば売主なら残置物の処分で「簡単に処分できる」と思うことがある。しかし、実際は粗大ゴミはすぐ引き取りに来てもらえず、片付けも労力を使って思ったよりも大変だ。そこで早めに取り掛かってほしいとお願いしつつ、引き渡しの2~3週間前には残置物処分の状況を確認して、思ったよりも進んでいなかったり、楽観的に考えているようなら、訪問して引き渡しができない危険性があると伝え、作業スピードを上げてもらうように促したい。

 一方で買主なら住宅ローンの本審査だ。昔とは異なり、顧客自身でネットを利用し情報をアップする本審査手続きが多くなったせいか、住宅ローン特約期日にようやく審査結果とギリギリになることがある。

 顧客だけにスケジュールを任せてしまうと危険だ。期日厳守とスケジュール共有は伝えておきたい。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。