本郷氏
勝木氏
江口氏
大木氏
パネルディスカッションでは制度誕生から約30年が経過した定期借地権の過去・現在・未来をテーマに議論が進められた。20年後に期限が迫っている案件もあるため、実務家の大木氏からは期間終了時に懸念されていることについて江口弁護士に法律上の考え方を確認する場面も見られた
定期借地権の課題と展望と題したシンポジウムが10月11日、都内で開かれた。協賛団体・企業は20にも及んだ。
第一部は本郷尚税理士と江口正夫弁護士による対話型トークセッションで、(1)定借における宅建業者の手数料問題、(2)公共セクターで進む定借土地活用、(3)定期借地権付きと所有権付きマンションとの比較ーーという3つのテーマで意見が交わされた。(1)はコンサルフィーとするのか、宅建業の報酬に関する大臣告示規定を改正するかの2択だが、現実論としては前者でいくしかないという結論になった。ただ、その場合には仲介業務ではなくコンサルティングを行ったという確かな証拠(成果物)を残しておくことが必須となる。
(2)ではかつて日本住宅公団が始めたことで一般分譲マンションが一気に普及したように、定借も自治体などの公共機関が活用すれば国民の間にも安心感と信頼が生まれてくる可能性が指摘された。(3)は50~70年後の出口戦略が法律で決められている定借マンションのほうが、何も定まっていない所有権付きマンションよりもスラム化不安がなく合理性が高いことが強調された。
第二部のパネルディスカッションは両氏に首都圏定期借地借家権推進機構理事長の勝木雅治氏、定期借地権推進協議会運営委員長の大木祐悟氏、主催者団体の全国定期借地借家協会組織渉外理事の速水英雄氏を加えた5名で行われた。いずれも定期借地権創設時からずっと関わってきたキーマンである。ライフリンクデザイン研究所の桐野能子氏が進行役を務めた。
温まる旧交
その後開かれた懇親会には協賛団体・企業関係者らに加え、登壇者らとの交流をずっと続けてきた人たちも久しぶりに顔を見せ会場を盛り上げた。以下はその懇親会場で筆者が登壇者にインタビューしたときのコメントである。
大木氏=定借業務はコンサルティングそのもの。また、定借のスキームを固定的に考えるのではなく、個々のケースにフィットするように自在に変える見識と応用力が求められている。
江口氏=今日の議論を楽しみにしていた。その期待をはるかに超える収穫があった。それは皆さんが普段から定借をその枠にとらわれず柔軟的に理解されていることが分かったことだ。
本郷氏=前払い地代方式に投資家が参入してきた点が大きい。今後は地代を経費で落とせるメリットに多くの人が気付き始めるだろう。借地期限が迫れば評価は下がるが入居者からの賃料は下がらないことも大きな魅力となる。
勝木氏=5人の専門家がそれぞれの視点から意見を述べたことで、今日は定借を全方位的に理解することができた。定借による未来はもう始まっていると感じた。
速水氏=とにかく、定借事業に関わっていると様々な人たちと出逢え、刺激を受け、仕事が楽しい。普通の不動産ビジネスではこうはいかないのではないか。それが、コンサルティングという仕事の本質なのかもしれない。