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不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(38) ~畑中学 取引実践ポイント~ 税理士以外でもアドバイス可能「住宅ローン控除への助言」

 取引完了後に顧客から尋ねられることが多いのは住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)についてだ。税理士法では具体的な個別税金の計算は税理士(税務署)しかできないと定めているが、一般的な税金の計算方法や手続きについては税理士以外でも助言して構わないとしている。住宅ローン控除で主に尋ねられるのは、(1)確定申告書や計算明細書の書き方、(2)提出する書類、(3)登記事項証明書の取得方法、(4)提出先と期間、これら4点で個別税金の計算を伴わないものが多い。会社のルールにもよるが安心して助言して良いだろう。もしくは、国税庁のタックスアンサーか所轄の税務署を案内し「そちらで聞いてみてください」でも大丈夫だ。

 (1)確定申告書と計算明細書の書き方は「計算明細書一面」→「二面」→「確定申告書二表」→「一表」の順に、計算明細書一面には売買契約書を見て住宅取得価格、登記事項証明書で床面積、年末残高証明書でローン残高を転記していき、二面は数字の計算、確定申告書二表は源泉徴収票を見て数字を転記し、最後の仕上げとして一表で今まで転記した数字をまとめて住宅ローン控除額を算出していく。

 ただし、一表では所得税率を記載する箇所があるので国税庁のホームページを見て所得税の税率は把握しておこう。顧客の多くが分からない点は「どこの箇所にどの書類を見て数字を転記するか」だ。その点、ネットやスマホでの申告では「この書類を見て入力してください」と分かり易く案内している。そちらを見てもらうよう案内するのも一計だ。それでも分からなければ顧客に来てもらい一緒に横で書類を見ながら助言した方が顧客にとって分かりやすくこちらも説明しやすい。

 (2)提出する書類は主に、(1)確定申告書、(2)計算明細書、(3)住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書、(4)登記事項証明書、(5)売買契約書(請負契約書)の5点だ。土地の購入もあれば(3)(4)(5)は土地のものも必要となる。ネットやスマホの申告なら(1)(2)は不要だ。提出書類と概要は数年ごとにマイナーチェンジしていて住民票が不要、登記事項証明書も写しや不動産番号を計算明細書に記載で代替できるようになった。筆者も顧客から住民票は不要のようですと突っ込みを入れられたことがある。恥をかかないために毎年国税庁のホームページを見ておこう。(3)登記事項証明書の取得方法は登記完了後に司法書士が識別情報通知と一緒に添付してくれているようならその利用を、添付されていないなら法務局や登記供託オンライン申請システムでの郵送取得を案内する。皆さんで代りに取得するのでも良いだろう。最後は、(4)提出先と期間。提出先は所轄の税務署、期間は給与取得者なら引き渡し翌年の1月1日から、毎年確定申告をしている方なら2月16日から3月15日までと案内するようにしよう。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。