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大言小語 レーモンド建築で初

 先月、文化審議会文化財分科会は、アントニン・レーモンドが設計し、夏の別荘やアトリエとして利用した軽井沢の「夏の家」を重要文化財に指定する旨を文部科学大臣に答申した。帝国ホテルを設計したフランク・ロイド・ライトの助手として来日したレーモンドは、各地にモダニズム建築を残し、比較的現存している印象だが、意外にも重文指定への答申は今回が初めてだという。

 ▼東京女子大学を始め、小林聖心女子学院(兵庫県宝塚市)、ノートルダム清心女子大学(岡山県岡山市)など、彼が1920年代から30年代にかけて設計した校舎の多くは、今なお現役だ。一方、住宅も比較的残っている。ただし、横浜・元町公園内でおなじみのエリスマン邸は、80年代にマンション建設に伴い解体された。部材を買い取った横浜市が公園内に移築・復元したのだ。

 ▼「夏の家」も、何代か所有者が変わり、現所有者が取得後、86年に移築・復原した。現在は、フランス人画家、レイモン・ペイネの絵画を扱う美術館に再生した。移築前は、解体がほぼ決まっていたという。

 ▼レーモンドは対日戦争協力者といわれた一方、戦後に再来日し、73年に帰国するまで、建物だけでなく木造住宅の供給に寄与した人材を輩出した。「夏の家」は、「木造モダニズム建築の先駆け」と改めて評価された。脱炭素化や持続可能性を問う時代の潮流が指定を後押ししたのだろうか。