総合

大言小語 多角的な視点を

 23年路線価は、全国平均で2年連続の上昇となった。まずは、経済のコロナ禍からの回復傾向が強まっている、とポジティブに受け止める向きが多いようだ。住宅・商業共に、土地の活用ニーズと取り引きの活発化を示しているなら、不動産事業者にとっては明るい材料だ。

 ▼また今年は、路線価額の対前年変動率の順位も興味深い。コロナ禍以前は、インバウンド急増により北海道倶知安町や沖縄県那覇市の上昇率が飛び抜けていて、次いで東京や大阪など大都市の中心部が上位を占めていたが、今年の1位は岡山。そのほか、福井や奈良、岐阜、秋田などの主要地点が順位を上げている。以前の「二極化」状態から、各地方の活発化・格差縮小へとシフトしつつあることの現れと思いたい。

 ▼ただし路線価額は、つまり税額の基準。相続税や固定資産税の上昇につながれば、事業者だけでなく、ささやかな不動産を大切な資産とする一般国民の負担も増える。中間層の所得水準は低迷が続き、光熱費をはじめ生活費の上昇も相次ぐ中、国民の税負担増加は更なる経済衰退を招きかねない。

 ▼地価動向は社会の動向を示す指標として、正負双方の影響を持つ。今回の路線価の変動を受け、住宅・不動産事業者はどのような事業や商品で一般エンドユーザーと向き合うのか、あるいは〝向き合わない〟のか。多角的な視点を持ち、業界の使命を意識した事業活動を期待したい。