総合

大言小語 少しずつの我慢

 5月に入り、能登地方や千葉南部、トカラ列島、新島・神津島など各地で比較的大規模な地震が相次ぎ、不安が広がっている。今年は関東大震災から100年。過去を教訓とした対策は進化を続けているものの、いまだ改善の余地も大きい。

 ▼住宅・不動産業界は、主に建物の耐震性能向上のため、長きにわたり知恵と工夫を凝らしてきた。しかし広く「防災・減災」を図るためには、やはり人々自身の努力は不可欠。発災時の対応はもちろん、事前の準備・対策も住民自身の手による部分が中心となるが、これが難しい。例えばマンションの耐震改修一つとってみても、全員一致で負担を受け入れるケースは少ないようだ。

 ▼自身も含めた全体最適のため、構成員が負担を少しずつ受け入れるという考え方は、防災に限らず人間社会の大前提だ。大都市やマンションのように、人口密度が高ければ一層重要となる。ごく身近な例で言えば、電車やエレベーターでも、全員が列や乗降マナーを無視してしまうと正常な運行は困難。こうした「少しずつの我慢」が、都市や地域、施設、組織を成立させている。

 ▼他方、秩序の恩恵を受けながら、自身は従わない〝フリーライダー〟が増えれば、防災活動とておぼつかない。とはいえ管理や統制の厳しい社会も息苦しい。自発的な「少しずつの我慢」をいかに広げるかが、更なる防災力の向上のためにも肝要だろう。