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酒場遺産 ▶11 東京・池袋東口 たちのみ喜平  酒を店の売価で呑ませる真正角打ち

 「たちのみ喜平」。池袋駅東口から徒歩5分の角打ちだが、知人から教えてもらうまで知らなかった。日本のガウディとも呼ばれる異端の建築家 梵寿綱氏設計のビル「斐禮祈:賢者の石」(1979年竣工)の一階。静岡・岡山・首都圏を中心に、酒の販売を中心に多角的な事業を展開する株式会社平喜屋が保有するこのビルの小売酒屋を閉じた後、2000年「たちのみ喜平」として角打ちをはじめたという。

 ベレー帽が似合う店主は結構なお年と思うが、笑顔が人懐っこくチャーミングな人。店主お勧めの岡山平喜酒造「喜平純米吟醸」は木桶の香り、とても美味い。もうひとつの店主お勧め、静岡県平喜酒造「誉富士喜平純米吟醸」は少し濃厚だが、これまた美味い。どちらも一合450円と手頃。他に日本酒は久保田など多数。また、みちのくレッドビール、アフターダークなどクラフトビール、黒白ホッピー、焼酎のダッタン蕎麦茶割り、麹醪酢割りなど珍しいものも嬉しい。壁一面に並ぶウイスキーもリーズナブル(ホワイト300円、グレングラント400円、サクラクロノス700円など)。カウンターにズラッと並んだ魚・野菜・モツ料理など一皿全て250円、味が染み込んだオデンも美味しい(1つ150円、2つ250円)。

 たまに子連れのママもいたりして流れる空気感が穏やかだ。初めて訪れた時には店主から「お近づきに」と樽酒一枡と玉こんにゃくをいただいた。角打ちは、酒屋の一角で酒の売価で呑ませる真正角打ち、酒屋廃業後に店主が趣味で開く角打ち、最近増えた値段高めのおしゃれ角打ち風など様々だが、「たちのみ喜平」のように酒が安く肴の美味い角打ちは少ない。(似内志朗)