総合

社説 人材確保は待ったなし 学生にとって魅力ある仕事に

 住宅・不動産業界にも多くの新入社員が入社した。弊紙が毎年行っている「主要住宅・不動産会社新卒入社アンケート」調査で、回答企業が必要人員を確保できたと答える企業が約6割に留まった。内定辞退者の増加やそもそも住宅・不動産業界への志望者が減っているという指摘もあった。新卒採用は少子化もあり、超売り手市場。こうした中での内定者の辞退増加や志望者の減少は、住宅・不動産業界の仕事の魅力が十分に学生に伝わっていないということの現れだろう。今年度の採用活動においても、採用人数を増やす企業が過半数であり、業界内のみならず他業界との競争も激しくなると予想される。中途採用を考えても業界の魅力を発信していくことは今後ますます重要で、それは待ったなしの状況である。

 内閣府が昨年公表した「令和4年版高齢社会白書」によると、15歳から64歳までの生産年齢人口は2020年から25年までに339万人減少すると推計されている。実績値で20年から21年の1年間で59万人も減少した。25年以降も生産年齢人口は減り続け、構成年齢も上がっていく。総人口の1割しかない0~14歳の若年人口も同様に減り続けているためだ。今よりも新卒採用の難易度が増していくのは火を見るより明らかだろう。そして、生産年齢人口の減少は、中途採用の難易度も年々上がっていくことを意味している。経済指標の予測は当たらないものが多いが、人口動態に関しては推計値の信頼性が高い。つまり、この推計はかなり高い確率で将来、現実となる。

 かつて住宅・不動産業界は、魅力的だった。厳しい面はあるものの経済的な待遇は良く、多くの志望者が業界の門をたたいた。採用する企業も、多くの志望者を採用し、その中から優秀な人材に成長してもらえばよかった。「来る者は拒まず、去る者は追わず」のスタンスで問題なかった。生産年齢人口は95年をピークに減少が始まっていたが、バブル崩壊後に経済全体が落ち込む中では問題が顕在化しなかった。多くの企業で採用を減らした時期が長く続き、固定費と考えられた人材は減らすべき対象だったからだ。

 現在は、好不況に関係なく新たな人材を確保しなくてはならない局面となっている。社員の年齢が上がっていく中で、若い人材を確保できない企業は活力を失い、成長もない。個人商店で後継者がおらず高齢化で廃業するケースが話題になるが、今後は企業単位でも起き、M&Aや倒産という形で表面化してくるだろう。住宅・不動産業界としての発展を支えるのは人材だ。

 若い人に仕事の魅力を発信すると共に、仕事そのものを他の業界よりも魅力的にすることが最も重要だ。住宅・不動産業界は今の仕事が業界の外から見ても魅力的かどうかを早急に見直す必要がある。