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彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇82 「PPP講座」ってなんだ? プロの職責を問う 経済もビジネスも哲学の時代

 第1回「PPP(プロフェッショナル・プレイヤー・フィロソフィー)講座」が都内で開かれた。一般社団法人不動産流通プロフェッショナル協会の主催。3番目のPはフィロソフィー(哲学)の意味。同協会は不動産流通推進センターが認定する公認不動産コンサルティングマスターと宅建マイスターを会員とする組織で一昨年設立された。

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 様々な資格者がいる不動産業界だが、それら専門家がプロとして担うべき職責を〝哲学〟的見地にまで踏み込んで実践していこうという組織はめずらしい。それだけに今回、同協会がスタートさせた第1回PPP講座への関心が高まっていた。

3氏が講演

 講義はまず、同協会顧問でアトリウム会長の竹井英久氏が、主に米国不動産流通業界との比較から我が国の流通業界が目指すべき方向性について語った。続いて東急リバブル常勤監査役の橋本明浩氏が我が国の宅建業法とコンプライアンスとの関係について検証した。

 3番手はNextBRANDING代表取締役の佐藤雄樹氏で「そもそも仕事とはなにか」など、まさに哲学的観点からの講演を行った。

 〝新しい資本主義〟が議論されるように、今や経済やビジネスにも哲学が求められる時代になった。経済とは人々が豊かな生活を送るためのシステムだから(かつては農耕民族と漁猟民族が物々交換をして互いに欲しいものを手に入れたように)、それによって豊かになる人だけでなく、貧しくなる人も生まれるとすれば、それは〝経済の失敗〟だ。ところが、それを経済成長のためにはやむを得ないことという〝本末転倒〟の議論がいつのまにかまかり通ってきたのがこれまでの資本主義であると筆者は思う。

 一方、そもそも経済とはそうした内包する矛盾を〝調整するシステム〟であるから、今こそその本来の機能を発揮すべきで〝新しい資本主義〟をめぐる議論はそのためのものであるとする説もある。なぜなら、経済は「経世済民」の訳語といわれるようにもともと倫理観を含む言葉と解するべきだからである。

 言うまでもなく、不動産業も経済の一分野であるから、それによって不幸になる人が生み出されているとすれば、それは〝不動産業の失敗〟である。

仕事とはなにか

 経済は人々が仕事をすることによって成り立つものだ。だから経済が本来の道を踏み外さないためには、仕事とは何かという探求を怠ってはならない。日本流にいえば、仕事とは「世のため、人のため」にある。だから、誰かを犠牲にすることによって誰かが得をすることなどはもともと〝仕事〟とは言わない。

 まして、不動産流通業はアマ(売主)とアマ(買主)を仲介する仕事だから、プロの資格者としては双方に誠意を尽くす必要がある。竹井氏は「仲介担当者を〝営業マン〟と呼ぶのはおかしい。誰の営業をしているのか」と疑問を呈する。

 橋本氏は結論として「常に職業倫理・コンプライアンスを念頭に公正・公平な態度で不動産取引に臨むしかない」と指摘した。

 佐藤氏は「業界を変えようとすれば、そこに立ちはだかるものが必ずある。しかし、なにごともゼロから始める勇気をもって、共感と自社のファンづくりを進めることが重要だ」と起業の意義について熱く語った。