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大言小語 少しずつ、少しずつ

 このほど、国土交通省の不動産DXに詳しい職員と意見を交わした。同省は日本全国の3D都市モデルの整備・活用プロジェクト「プラトー」をはじめとした不動産DXを推し進めている。しかし、その職員は言った。「不動産DXというと既存業界を壊して、ガーッと進むようなイメージがあるが、実際はそんなことはないのでは」と。

 ▼例えば、「不動産ID」。これで情報が一元集約されて活用できると思いがちだが、それは結構先の話とする。物件広告といったところから民間が少しずつ進めていって、やがて情報活用ができるようになる。効果が出てくるのは10年後かもしれない。でも、「まさに今から」少しずつやる必要があると。海外事情にも詳しい彼の言葉には説得力があった。

 ▼ふと昔を振り返ると、09年4月7日の小欄で、競馬の武豊と将棋の羽生善治を紹介している。当時、武豊は三浦皇成という新人に記録を破られ、羽生は、渡辺明にその地位を脅かされていた。「後輩たちの中に埋もれてしまうのか」と書いたが、14年が経った今、武はまだ現役で昨年最も名誉があるレース「日本ダービー」を勝った。羽生は今年、王将戦に挑戦し、タイトルは逃したものの、堂々と戦った。

 ▼変革の嵐のような時代だが、変革には揺り戻しもあり、少しずつ進んでいく。少しずつ少しずつ、この業界も変わり、一般消費者の評価も変わっていくことを望みたい。