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酒場遺産 ▶2 東京・人形町 「笹新」と「加島商店」 老舗酒場と真正角打ち

 人形町・浜町辺りは仕事柄度々行くが、街に艶があり歩いているだけで嬉しい。まして夕刻早めに打合せなどが終われば、自然と酒場に足が向く。数多ある魅力的な酒場・小料理屋・料亭などがあるが、筆者が普段よく行く店が「笹新」と角打ち「加島商店」だ。「もっと素晴らしい店があるのに」という声もありましょうが、ご容赦いただきたい。

 まず一件目の笹新は人形町甘酒横丁の中ほどの角にある平屋の酒場で、「酒の店 笹新」という看板が目立つ。隣接する新川屋佐々木酒店が昭和45年に始めた老舗酒場だ。店は狭い。入って左側に厨房前カウンター席(約10名)と右側に小さなテーブル席がある。一人あるいは2、3人で行くならカウンター席が楽しい。カウンターにはポテサラ、煮物、煮魚などの大皿料理が並び、どれも美味そうに見える。魚も酒も豊富で、刺身も時期で異なるが、マグロ、ヒラマサ、カツオ、いわし、シメ鯖など大方700~900円程度、その他の料理もリーズナブルで美味い。普段着の酒場としてお薦めしたい。

 笹新の帰りに大門通り沿いすぐの角打ち「加島商店」に寄る。最近の「おしゃれ角打ち」と違う、真正の酒屋の角打ちだ。昔ながらの木製のガラス戸を開け店に入れば、壁には一升瓶が並ぶ。年配の店主は、常連客と杯を傾け酔っぱらっているようだが、これが楽しい。素っ気ないグラスに一升瓶から並々と酒を注ぐ。鶴齢・銀杯・開運など正一合300円(ほぼ原価)という安さ。商売を考えていないのだろう。ここに友人・知人を連れてくると必ず盛り上がる。食べ物は乾きものと缶詰のみ、さすがの真正角打ちだ。(似内志朗)